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34:闘将の眼


四方から突き出される槍を潜り抜けて剣を振り下ろす、鎧武者は籠手を着けた腕で防ぐが半ばまで断たれてもこちらの動きを止めようと迫ってきた。


剣を手放して腕を掴むと背負う様に持ち上げて背後から迫っていた鎧武者に投げ飛ばす、すぐに巨大戦斧(グレートアックス)を手にして真横に振るう。


鎧の上から叩き潰す一撃を受けた鎧武者の体が上下に分かれる、だがその隙を縫う様に鎧武者達は槍を突き出してくる。


(強いな……何より集団での戦い方に慣れている)


これほどの密集した乱戦になれば攻撃を受け流して同士討ちを起こさせるという手があったが鎧武者達は同士討ちが起きない最小限の動きと連携で攻めてくる。


かと言って上に跳んで逃れようとすれば術の雨の晒されて撃ち落とされるのは明白で鎧武者達を無視して本陣に向かうという事も出来ない。


称賛したくなるほどに鍛えられた兵と包囲、これほどの部隊を築いたシオンという将の才に思わず舌を巻いた。


槌矛(メイス)で鎧武者の頭を兜ごと叩き潰した直後に八方から槍が一斉に振り下ろされる、刀を手に受け止めるが降り掛かる衝撃に脚を通して地面が砕けた。


上から押さえつけられた状態となった俺に後ろに控えていた鎧武者達が槍を突き込む、迫る穂先を捉えながら呟いた。


「“(エクリプス)”」


俺を中心に闇が暴風となって吹き荒れる、迫っていた槍どころか俺を押さえつけていた槍を持っていた鎧武者達も槍を打ち上げられた様になって後退した。


刀に身に纏った闇を宿して振り抜く、漆黒の斬撃が目の前にいた鎧武者を斬り裂き吹き飛ばした。


「“(これ)”は久しぶりだな……」


闇の尾を引きながら俺は鎧武者達に向けて刀を振り下ろした。










―――――


(シオンside)


「あれは報告になかったが……凄まじいな」


ベルクという男の戦う姿を見ながら呟く、ゼンも鬼神と言っても過言ではない戦いぶりを見て固唾を呑んでいた。


「シオン様、このままでは奴が本陣につく可能性が」


「可能性ではなく確実に来るだろうな、だがすぐにではない」


俺はそう答えながら兵達に指示を出す、介者部隊をベルクの方に動員した事で今の本陣の左右は空いてる状態に見えるだろう。


「その隙を見逃す筈がない」


そう呟いた直後に本陣の右側から此処からでも分かるほどの炎が巻き上がる。続けて左側の山から土砂崩れが起きて迫ってきた。


()()()()()()()()


あのベルクという男ならばと確信があった、逆の立場なら俺も同じ手を使っているからだ。









―――――


(ラクルside)


「これは……」


セルクが“蝕”を発動したのを合図に事前に仕込んでいた土砂崩れが起こし、山から状況を見ていた俺は思わず呟いた。


装備が普通のにも関わらずオヅマ兵達は揃った動作で術を発動して巨大な結界を発動する。百近くの兵による結界は土砂崩れを完全とは言わずも塞き止め期待していた効果は出せなかった。


「……あれはオヅマの術師部隊です、複数でひとつの術を行使する事で神器に匹敵する術を発動する事に長けた部隊です」


「……一般兵に扮して編成していたのか」


だとしてもあれだけの術は発動にかなりの手間が掛かる筈だ、それが出来たのは相手はこの襲撃を想定して予め配備していたからに他ならない。


反対側でも同じ様に結界が展開されて炎が防がれている、挟撃によって本陣を崩す策は完全に失敗した。


「予定通り突撃はやめて本隊と合流する、急げ」


元々この策は失敗したらすぐに退く様にセルクが言っていた、だが本隊と合流する間に追撃されるだろう。


セルクからは現場での判断は任せると言われている。なら少しでもセルクが動きやすくするべきだろう。


「ヒノワ、アメリ、指揮を任せる」


「ラクル様は?」


「俺は追撃の阻止と左翼を崩してくる」


ザンマを構え土砂崩れによって生まれた斜面を下りながら力ある言葉を口にした。


「嶽装展開“甲嶽王(ザンマ)”!」


岩の鎧を纏って俺は結界に向けて跳躍した。

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