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30:捨て身の剣


「“飛燕”は……父様が研鑽の果てに編み出した神速の抜刀術、見様見真似で使える技じゃないのに何故貴方が!」


アメリの叫びが高台に響く、抑えつけていた感情が溢れ出したかの様に。


「……カオスクルセイダーには数多の戦士の魂が内包されている、クノウの魂もな」


クノウの魂を形にした刀を手にする、刀に見覚えがあるのかアメリは眼を見開いた。


「俺はクノウと共に戦っている、それだけの話だ」


「……なんで」


アメリが呟く、手にした刀を握る力が強くなっていた。


「どうして、父様は貴方に……その技は私が引き継ぐ筈だったのに、私が受け継がなきゃならないのに……」


アメリの眼の光が揺れる、ごちゃ混ぜになった胸中を表すかの様に。


……その感情を俺は知っている、それを抱える苦しさも。


「アメリ、お前ではクノウの仇は取れない」


「っ!?」


「それどころか今のお前ではクノウの仇どころか“飛燕”すら使いこなせない」


だからこそ吐き出させる必要がある、抑え切れないその感情を。


「……貴方に何が分かるんですか」


アメリは激しい怒りを眼に宿して俺を睨みつける、そして感情のままに叫んだ。


「余所者の癖に!父様の魂を利用してる貴方に何が分かるんですか!?」


放たれる怒気を受け止めながら刀を構える、そして静かに告げた。


「気に入らないなら一太刀俺に入れてみろ、そうすればさっきの言葉は撤回しよう」


「…っ!」


アメリの歯を噛む音が響く、そして刀を引き抜きながら踏み込んできた。


真一文字に振るわれた刀を下がって避ける、すかさず喉に向けて突き込まれた鋒を横から叩いて弾くと鞘でアメリの腹を打つ。


「かは……ああっ!」


後退するもアメリはすかさず踏み込んで袈裟斬りを放つ、鞘で受けて逸らすも刃が翻って下から迫る。


迫る刃を横に転がる様に避けると下段の斬り払いが振るわれる、跳躍して避けるも着地と同時に上段からの振り下ろしが放たれて刀で受ける。


「……苛烈で強い剣だ、だが」


刀を回転させる様に刃を流して柄尻で腹を突く、アメリは突かれた腹を抑えて膝をついた。


「守りがない、守りの動きは学んでいる筈だろう?お前はそれを捨て攻撃に回しているな」


「……守ってたら、敵は倒せない!」


刀を掴み直したアメリが再び斬り掛かる、一撃の威力ではなく早さによる連撃へと戦法を変えたのか振りも小さく突きを主体としていた。


それを避ける、捌く、弾く、迫り来る連撃を冷静に対処して受け止める。


「どうして、抜かない!?」


「抜く必要がない」


歯を噛み締めるアメリがこちらに斬り掛かろうとした瞬間に踏み込んで軸足に鞘を添える。


「あっ!?」


体勢を崩して転がり仰向けに倒れたアメリの眼前に鞘を突きつけた。


「これがお前の限界か?」


身を翻したアメリが仕掛けた足払いを避ける、距離を取るとアメリは刀を納め重心を低くして構えた。


居合い……刀によるヒヅチ特有のものでクノウが得意とした剣術だ。

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