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28:術師の策略(オヅマside)


「そのような戯言は好かぬ」


天堂城の一角、部屋の奥に腰掛けた男は低い声で目の前の黒衣の男に言い放った。


「事実にございます、先遣隊五千は壊滅し、更に東谷城と西水城が陥落してゴモンの手に落ちました」


黒衣の男……ムドウは目の前の主君であるヨウザン=オヅマが放つ怒気に怯む事なく淡々と告げる。


「……敗因はなんだ?よもやそれすら分かっておらぬと吐かんだろうな?」


「……まだ調査の途中ではありますがゴモンはヒューム大陸の覇者と言えるミルドレア帝国に救援を依頼し、それに応え帝国は騎士団を派遣した様です」


「騎士団だと?」


「はい、総勢四人からなる騎士団と属国の騎士の五人が帝国より派遣されました」


「たかが五人に五千の兵と城ふたつが敗れたと?お主にそんな馬鹿げた事が言えるとは初めて知ったぞムドウ」


ヨウザンの怒気が一層高まる、だがムドウは淡々と言葉を続けた。


「その五人は全員が神器の担い手です」


「なんだと?」


「騎士団の名は黒嵐騎士団、その団長は一年前のあの厄災を起こした魔神を打ち破った者です」


ムドウの言葉を聞いたヨウザンの怒気が鳴りを潜める。


「神器の担い手は一人で一騎当千……それを率いる長となればその強さはシオン殿に引けを取らぬ強さを持つでしょう。

如何に黄泉兵と言えど向かわせたのは末端、敗れたのは必定と言えましょう」


「ミルドレアめ……ヒヅチの情勢に割って入るとは何様のつもりだ」


ヨウザンの怒りの矛先がミルドレアに向く、それを計っていたかの様にムドウは口を開いた。


「ひとつ進言したい事がございます」


「……申してみよ」


「シオン殿と傘下の将兵一万五千を出陣させるべきかと」


「シオンのみか?相手が神器使いとあらばドウゲンと黄泉兵も向かわせるべきではないのか?」


「それが出来ない理由がみっつあります」


ムドウはそう言うと理由を語り出した。


「ひとつはゴモンは山岳地帯が多く大軍を活かすのが難しい事、シオン殿と傘下の兵ならば問題ないでしょうがまだ単純な動きしか出来ない黄泉兵は向いておりません」


「ふむ……」


「次にシオン殿とドウゲン殿は折り合いが悪い、複数の担い手が相手にいる状況で指揮系統が乱れる可能性は極力排除しておきたいのです」


「成る程な、それで最後は?」


「ゴモンの制圧と黄泉兵の強化を同時進行でしておきたいのです」


ムドウははっきりと答えた。


「担い手と言えど相手が率いるは只の兵、シオン殿が率いる精鋭であれば勝ってみせるでしょう。

ですが受ける被害は決して少なくないと思われます、その補填の為にも黄泉兵を今の内に強化しておきたい」


「……」


ヨウザンがムドウの言葉を聞いて考える、ムドウは更に発言を続けた。


「我が国は黄泉兵によって周辺諸国を平定してきました、ですがそれを成せた最たる由縁はオヅマの精強さがあってこそだと考えております。

此度の戦は未だ従わぬ者達にオヅマがヒヅチを統一するに相応しい存在だと示す良い機会かと」


ムドウの言葉を聞いたヨウザンはしばし考え、やがて言葉を紡いだ。


「良いだろう、ゴモン攻略にはシオンを向かわせよう」

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