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27:選ぶのは


「……私にオヅマを裏切れと言うのか?」


「端的に言えばそうだな」


「たわけた事を」


イルマは鋭い目付きで俺を睨んでくる、そして矢継ぎ早に口を開いた。


「国を裏切り貴殿達についたところで待つ未来は死だけだ。ムドウならばこの城が落とされた事も掴んでいるだろう……。

そうなれば次に差し向けられるのは闘将シオンか骸将ドウゲンのどちらかだ」


「シオンとドウゲン……」


「シオンが率いる介者部隊を筆頭とした一万五千の精鋭、ドウゲンの率いる黄泉の軍団、更に言えば二人は一振で一国を揺るがすと言われる“大業物”の使い手だ」


イルマはそう言いながら俺達を見る、そして歯噛みしながらも続けた。


「貴殿達は確かに強い、だがオヅマとゴモンの地力の差はもはや覆し様がないのだ!ならば裏切り者として死ぬよりは筋を通して死ぬ方を選ぶ!」


イルマは堂々と言い切る、その姿はまさしく忠臣と言えるだろう……だが。


「このままだとアンタが守りたいものは全て踏みにじられる事になる」


「民を盾にする気か!?」


「違う」


気乗りはしないがやるしかないだろう、色々と理由はあるが死なせるには惜しい男だと思った。


「オヅマをこのままにすればアンタが守ろうとしている兵も民も黄泉の魔物達に殺される」


「っ!」


「オヅマが黄泉の力を使うのを止めなければそれは実現する、アンタが自分の命と引き換えにしようとな」


イルマは最初に民の安否を聞く様な男だ、この男にとっては自身より民の方が大事なのは分かっている。


「……大殿はヒヅチをひとつにするという大望を持っていた、それが成就すれば黄泉の力など」


「手放す筈がない」


イルマの言葉を即座に否定する、胸ぐらを掴み目を合わせながら今度は俺が口を動かした。


「ヒヅチの統一を成せるだけの力を手放すなどできる筈がない、ましてや一国の王なら抑止力にも他の大陸の侵略に使える力を手放したりなど尚更な」


「そんな事、大殿が……」


「ヒヅチを統一した力がなくなればどうなると思う?その力を恐れ従っていた者はまた反旗を翻すだろう。

そうなればこれまでの事の全てが無駄になる、王だからこそ世界が滅ぶ危険があったとしても力を手放したりしないんだ!」


「……ならばどうしろと言うのだ」


イルマが絞り出す様に呟く、そして堰を切ったかの如く叫んだ。


「勝てると思っているのか!?貴殿達は世界を滅ぼす力を得たオヅマに勝てると言うのか!?ただの人間が神へ挑むのに等しい事だ!」


「……軍装展開“黒纏う聖軍(カオスクルセイダー)”」


イルマの目の前で漆黒の鎧を纏う、その姿にイルマは目を見開いた。


「その姿は……」


「神に挑む?そんなのは以前もやった事だ」


鎧を解除してイルマから手を放す、膝をついたイルマを見下ろしながら告げた。


「相手が誰だろうと関係ない、神だろうと俺の大切なものを踏みにじろうするなら倒すまでだ」


俺を見上げるイルマに再び問いかけた。


「アンタはどうする?戦って主君を止める事で民を守るか、蹲って自分の心を守るか……どっちを選ぶ?」


俺の言葉にイルマは沈黙する、だが覚悟を決めた目で立ち上がった……。


三日後、オヅマに東谷城だけでなく西水城まで陥落したという知らせが届いた。

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