23:ワーカルト
お待たせしました、第二章です(*´∀`)
「グキャッ!?」
手にした槍で前から飛び掛かってきたゴブリンを貫く、すると左から別のゴブリンがナイフを振るってきた。
左腕を前に出して念じると闇が溢れて左腕を覆う、闇は一瞬で籠手になってナイフを弾いた。
「ギギッ!?」
弾かれて無防備になったゴブリンの顔に右ストレートを叩き込む、槍から変化させた籠手が着けられた右腕はゴブリンの顔面を陥没させた。
(大分慣れてきたが…)
ゴブリン達の魔石を回収すると籠手に変化させたカオスクルセイダーを見る、重さも具合も誂えたかの様に馴染むが…。
(まだ全部を引き出せてないな)
慣れてきたからこそ分かる、まだこの武器を使いこなせていないという感覚があるのだ。
あれから声も聞こえなくなっているのも影響しているのだろうか。
「お疲れ様、こっちも終わったわ」
思案に耽っているとアリアが声を掛けてきたので中断させて向き直る、紅剣を持ちながら見てくるアリアに思わず首を傾げた。
「ベルクって色んな戦い方できるわよね…前は弓矢や斧槍も使ってたわよね?」
「何が自分に合うか色々と試したからな、まあ結局は剣と拳が性に合ってるけどな」
「いつもは斧も使ってるわよね?」
「硬い相手にはあっちのが楽だし雑に使えるからな」
剣はどうしても硬い相手や血脂で切れ味が落ちる、斧は刃の鋭さが落ちてもメイス代わりになるから良く使うのだ。
「ねえ、良ければベルクの戦い方教えてくれない?」
「俺の?」
「ええ、ルスクディーテを使ってみて思ったのだけどなんとなくベルクの魔術で強化する戦い方が合いそうな気がしたの」
「…参考になるかは分からないぞ」
二人でそんな事を話しながら港街へと向かう、俺達がウォークリアを出てから二十日掛けてグルシオ大陸の港町のひとつであるワーカルトに着いた。
入町税を払って入ると活気に溢れた気配が伝わってきた。
「ひとまずは宿と…後は船だがミルドレア行きで良いのか?」
「ええ、そっちの方が土地勘があるしね…あ、宿はあそこが良いんじゃない?」
そう言ってアリアが示したのは“イルカの寝床亭”という看板が吊られた宿だった、街の大通りにあるだけあって大きい宿の様だ。
宿に入ると食堂横にある受付で恰幅の良い女性が帳簿らしきものを見ていた。
「すまない、二人なんだが部屋は空いてるか?」
「二人?今部屋はひとつしか空いてないけど大丈夫かい?」
「それで良い、いくらだ?」
「二人なら一泊で銀貨二十枚だよ、泊まれば部屋にシャワーもあるけど奥にある大浴場が使えるよ」
それを聞いて頷き合うと料金を払って鍵を貰う、そのまま宿を出て港に行ってミルドレア行きの船への乗船券を買いに行った。
「出港が明日なのは運が良かったな」
「うん、今日のうちに買い物とか準備を済ませて早く宿に戻ろっか」
出港は明日の昼だからそれまでに消耗品の買い物や食事をして宿に戻る事した。
出港まで時間があるとしても余裕を持って早めに休んだ方が良いだろう…。
―――――
「あぅ…」
広めのベッドでアリアが蕩けた表情で横たわる、上気した肌には玉の様な汗が浮かんでいた。
「なんじゃ、もう果ててしもうたのか」
アリアの傍にルスクディーテが宙に浮かんだ状態で顕れる、アリアの頭を撫でながらも目線は水を飲んでいた俺に向いていた。
「日に日に貴様が勝ち越していくのう…これはアリアがというより貴様の雄としての強さが桁外れな故か」
「人を人外みたいに言うな」
「あながち間違いではなかろう…さてアリア、次は我がしても良いな?」
ルスクディーテの問いにアリアはこくりと頷く、するとルスクディーテは俺をベッドの上に倒して跨がった。
「まだまだ元気な様じゃからな、今度は我が鎮めてやろう」
「拒否権なんかないだろ」
「当然であろう、アリアと我という美しい雌に求められているのだから雄ならば応えてみせよ」
ルスクディーテはウォークリアを出てからこうして混ざってくる様になった、なんでも一人では差がありすぎるからとアリアと話し合って決めたらしく今では二人を相手にする様になっている。
こうして夜はふけていき、受付の女性にニヤつかれながら宿を後にした…。