15:ゴモンの当主
(???Side)
圧倒的な兵力によって今やヒヅチ随一の大国となったオヅマ、その当主が住まう天堂城は複数の山をまとめて砦としての機能を持たせた難攻不落の巨城である。
「これはどういう事だ?」
その山のひとつにある呪戒塔と呼ばれるオズマの術師が集まる塔の最上階にて黒衣の男が焼け焦げた呪符を手に目を開ける。
「我の黄泉忍が全て倒された?ゴモンの当主ならばまだしもあの娘と護衛ならば殺せる筈だが……力量を読み違えたか?」
男はブツブツと言いながら呪符を捨てて考える、だが背後から扉越しに声を掛けられて答える。
「なんだ?」
「大殿がお呼びです、次に攻める国を相談したいとの事」
「分かった、すぐに向かう」
男はそう返事しながら思考を止める事なく考える、そしてひとつの考えに口角を上げた。
「黄泉の兵も力も充分な頃合いであろう、そろそろゴモンを潰しに動くか」
ゴモンは神器の担い手である当主以外に際立った者はいない、当主さえ押さえ込めれば後は国の地力の差で押し潰せるだろう。
そう考えた男は今の段階で判明しているゴモンの兵力からどれだけの兵を向かわせるか考えながらオヅマの当主の下へと向かった……。
―――――
(ベルクSide)
死者達の弔いを終えて出発の準備を始める、馬や馬車は無事だったので準備を終えるとすぐに出発した。
道中で襲撃を受ける事はなく、半日掛けてゴモンの城下町に着く事が出来た。
既に夜の帳が下りた城下町は居酒屋や飯屋くらいしかやっていないがそれでも日々の労働を終えた人達の声が聞こえてくる。
酒を飲みながらくだらないと思える話で一喜一憂する光景は民に配慮した統治だからこそ見れるものだろう。
「良い町だな」
「ええ、見習うところはあるかも」
「……あの串焼き美味しそう」
「シュリン、ひとまずベルクの用事を終えてからにしましょう」
そんな事を話しているとラクルが城下町をじっと見ていた。
「どうした?」
「あ、いや……ガンザさんも此処に来たのかなと思ってな」
「ああ……」
そう言いながら思い出す、ザンマの先代の担い手でありラクルに想いを託していった戦士の事を。
「……ガンザさんの里が近くにあるなら行ってみるか、セレナなら浄化できるかも知れない」
「ああ、ありがとう」
そう話している内に城へと着く、案内されて中に入ると当主はすぐにでも話せるとの事で会う事にした。
一際広い部屋に案内されると奥にヒノワが十年ほど成長したかの様な女性が傍に黒髪の少女を控えさせながら座っていた。
ヒノワの服をより上等に仕立て上げた様な服に身を包み、床に届くほどに長い亜麻色の髪に淡くも彼方を見通す様な瞳をしていた。
「遠路はるばる来ていただきありがとうごさいます」
そう微笑む女性の胸元には黒い勾玉が光っていた……。