4:現在のベルガ王国
書状を受け取ってすぐにベルガ王国に向かいながら改良された通信水晶を取り出す、魔力を込めて起動させると水晶にラクルの姿が写し出された。
「ベルクか、何かあったのか?」
「ああ、重大な話なんだが大丈夫か?」
「今は私室にいる、遮音の結界を貼ったから大丈夫だ」
ラクルにヒヅチの件を簡潔に話すと少しの間だけ考え込んでいたが思い当たる事があるらしく話し始めた。
「相談しようかと思っていたんだがザンマから語りかけられる事があったんだ。
王国でも異変は起きていたから俺も調査に加わっていたんだがその時ザンマから“門が開こうとしている”と言われた」
「門……?」
「ああ、先日の事で異変と関わりがあるんじゃないかと思って調べようとしていたんだが……無関係ではなさそうだな」
「ラクル、どこかで合流できないか?ヒヅチの使者がどう出るかは分からないが不測の事態に備えたい」
「なら王都で合流しよう、その後に使者達を迎えに行けば強行手段に出られたとしても万が一はない筈だ」
「賛成だ、それとフィリアはどうしてる?」
フィリアはベルガ王国に研究室を建てて魔術の研究をしている、今はカムツヒの研究とエルフォードの資料の解析をしているのだが……。
「それが俺が最後に顔を見たのは一ヶ月前なんだ……テレジアが忙しく働いているから元気だとは思うんだが」
「やっぱりか……ひとまず俺達は王都に向かってるから詳しい話はそっちでしよう」
ラクルとの通信を終えると対象をフィリアに変えて起動させる、しかし反応は返ってこなかったのでテレジアに変えるとテレジアが映し出された。
「ベルク?」
「久しぶりだな、火急の件なんだがフィリアに取り次いでもらえないか?」
「……また研究に没入して気付いてないのね、少しだけ待ってちょうだい」
テレジアはそう言うと通信を繋いだままつかつかと歩く音が響く、少しして扉を開ける音がした。
「ん―、テレジアちゃん?今良いところだから後で……」
「後で……ではありません!ベルクからの通信が来てますよ!」
「え?あ、本当だ……全然気付かなかった」
「それになんですかその目の隈にボサボサの髪は!?徹夜はせず清潔にしてくださいと言っているでしょう!」
「お、お風呂なら入ったし休んではいるよ?……二日前に」
「シャワーでも良いですから一日一回は身を清めてちゃんと寝てください!体を壊したら元も子もないでしょう!」
テレジアは最初こそフィリアの研究対象だったが魔術の才と教養、更にはフィリアの研究についていけるだけ能力も相まって今ではフィリアの専属助手になっている。
現在は身の回りの世話や外交も請け負っており、元からフィリアについていた部下や騎士達から一目置かれる存在となっている。
「ひとまず通信に出てください!終わりましたら私も手伝いますので休んでもらいます!」
「え―……」
「あんまり御無理をなさる様なら陛下にご報告しなければならないのですが……」
「わ、分かった分かったから!ベルク君と通信繋がってるんだよね!?代わって代わって!」
通信水晶にフィリアの顔が写る、水晶越しからも分かるくらい顔色が良く見えないがさっきの話からしてひとまずは大丈夫だろう。
事の詳細を話すとカムツヒを持っていっても良いとの事だった、おおよそのデータは得れたし国同士の話となれば言う事はないとの事だ。
「あと、研究は良いけどちゃんと休んでくれよ?」
「う―……どうして時間は有限なんだろう」
フィリアとの通信を終えると兄貴に連絡を取る、忙しいから出れないかと思ったがすぐに出てくれた……。