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2:報告


「おー戻ってたか」


帝都に戻って支度を終え、アリア達と城の廊下を歩いていると先達の称号騎士である“雷穿騎士”ランディルが声を掛けてきた。


ランディルとは帝国に帰順してから彼の団員と飲みに行ったり模擬戦をする仲だ、元々は海賊じみた自警団を束ねていたがヴィクトリアにスカウトされて騎士になったという異色の経歴を持つ。


「ランディルにも召集礼が?」


「ああ、つうか称号騎士には全員に出たみたいだぜ」


「……それだけ火急の案件って事か」


ランディルと話しながら会議室に入る、既に他の騎士と重臣達が座っており俺達もそれぞれの席につく。


アリア達は俺の団に所属(というよりアリア達しかいない)となっているが立場的には他の騎士達と変わらないので同席している。


少ししてヴィクトリアが入ってきて最奥の椅子に座る、部屋を見渡すと凛とした声で言葉を紡いだ。


「それでは会議を始める、まずは三ヶ月前から起き始めたダンジョンと魔物の活性化の調査結果を各自報告せよ」


「それでは私から報告させていただきます」


深緑の鎧を纏ったアルクトスが手を上げる、手元の資料を示しながら話し始めた。


「まずは今回の事態に対して私ことアルクトスとロスフォール殿、ボルガ殿とランディル殿、ルミナス殿は教国と、ベルク殿達に分かれて調査を開始しました。

それぞれミルドレア帝国領、ベルガ王国領、ラウナス教国領、そしてベルク殿達にはダンジョンの実地調査を実施しました」


「現状帝国領での影響は微々たるもの、と言えますが……魔物の出現頻度が増えてきていますな。

今の内に兵の派遣や冒険者の手配等をするべきでしょう」


「教国でも行商人や巡礼者が魔物に襲われる頻度が増えています。

魔物避けの結界や魔道具を設置し、冒険者ギルドが討伐をする事で対処していますが原因は掴めていません」


「王国では魔物の活性化のみならず出現率も上がってきていますな、まだ騎士団と冒険者達で対処できていますが更に出現率が高まれば些か苦しくなります」


「海の方は王国側……東に行くにつれて魔物が活性化してやがる、ここ最近じゃ襲われる船が多くて交易にも支障が出始めてきやがった」


各々が調査結果を報告していく、おおよそ出し終わると俺も調査結果の報告を始める。


「私達は帝国領内の中規模ダンジョンを調査しました、出現する魔物が資料と違っていたり中にはボスが変わっているダンジョンもありましたが……」


「何か気になる事が?」


「ダンジョンの規模に変動がないんです」


そう言って重臣達に説明する、ダンジョンは内部の構造が変わる事はあっても規模や仕掛けが変わる事ない。


基本的に出現する魔物も階層毎に定まっており、魔物災害(スタンピード)でもない限りは出現する魔物が変化するというのは新しい階層が生まれでもしない限り起こらない事なのだ。


「ダンジョンの規模が大きくなるという事例はありますが魔物だけが強くなるというのは前例がありません」


「……またぞろフィフスの様な者共が暗躍しているのでしょうか?」


「ですがこの短期間でそんな事が出来ますか?あの件以降ダンジョンの内外問わず警戒が強まっていますが怪しい動きはひとつも見つかっていません」


「人為的に起きたと断定するのはまだ早いでしょう、あの世界規模の厄災から一年……その影響が出始めたのかも知れませぬ」


文官、武官、魔術師、学者……あらゆる立場の者が様々な視点から意見を出していく。


議論が飛び交う中で侍従がヴィクトリアに耳打ちと書簡を渡す、ヴィクトリアは書簡に目を通すと言葉を紡いだ。


「静粛に」


凛とした声で告げられた言葉に全員が熱のこもり始めた議論を止める、そして書簡を示しながら続けた。


「まずは今回の異変に際して各々の調査ご苦労だった、そして今回の召集は調査をしてきたお前達の意見が必要と判断した故に発令した」


「……それはその書簡の内容の事でしょうか?」


「そうだ、平時であれば余も一考する事すらないが今の状況では無視できぬ事が綴られておる」


侍従が書簡を受け取るとアルクトスに手渡す、アルクトスは書簡に目を通すと一瞬驚愕を浮かべるも落ち着いて書簡の内容を口にした。


「“ヒューム大陸で起きている魔の活性化はこれで終わりではない。

更なる災いを防ぐには我が国より奪われた神器、嶽刀ザンマと神鏡カムツヒが必要である”」

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