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21:後悔するとしても


翌朝、目が覚めるとベルクの姿はなかった。


行動を共にして数日程度なのに寂しさを感じる、だが仕方ないと受け入れた。


当然だろう、私がやろうとしているのは一国に一人で喧嘩を売りに行く様なものだ、まともな神経の持ち主なら関わらないだろう。


身支度を整えてルスクディーテと長剣を腰に差して宿を出る、街の通りを歩いているとルスクディーテが声を掛けてきた。


『なんじゃ、あの番に一緒に来てくれとは頼まんのか』


「番って訳じゃないわ、私が力を得る手助けをしてって依頼をしただけだもの」


『ならばまた依頼すれば良かろう、それに我が出した条件を忘れたのか?』


「死ぬと分かっていて依頼する訳ないじゃない、それに条件だってベルクでないといけないとは言われてないわ」


『まあ、そうではあるがな…あれほどの雄は中々おらんだろうなぁ…』


話している内に街の門へと着く、朝早いからか人気のない門の前で少しだけベルクを追ってこの街にまで来てからの事を思い出して立ち止まるも門を越えようとして…。


「ここにいたか」


さっきまで思い出していた声が後ろから掛けられた。









―――――


「な…んで」


「長旅になりそうだから買い出しとギルドへの報告とか色々済ませてきた」


背負っているアイテムバッグを示しながらアリアの前に立つ、彼女は信じられないという眼でこちらを見ていた。


「…一緒に来る気なの?」


「そうだが」


「分かってるの?私はこれから国を相手に戦おうとしてるんだよ、いくら強くったって捕まって処刑されるかも知れないし聖具も私達のに匹敵するかも知れないんだよ?」


「そうだな」


「ならなんで!?こんな勝ち目のない戦いにベルクが来る必要なんてない!」


アリアの言葉が響く、巻き込みたくないという思いが伝わってきて自分が出した答えは間違ってないと確信した。


「ああ、アリアの言う事は正しい」


「なら…」


「でも仕方ないだろ、情が湧いたんだから」


アリアが呆けた顔をしてこちらを見る、それに構わず出した答えをアリアに告げた。


「戦う事を後悔するかも知れない、だけど今アリアを一人で行かせれば俺は必ず後悔する、ならその先後悔しないかも知れない可能性に賭けても良いだろ」


「…なにそれ、情が湧いただけでこんな厄介事に首を出すの?おかしいよ」


「知っての通り俺は兄貴より頭が悪かったんでな、賢く動くより心に任せて動いてしまうんだ」


「なにそれ、本当に馬鹿…」


「友達助ける為に一人で国と戦おうとする馬鹿とは釣り合いが取れてるんじゃないか?」


アリアは顔を俯かせる、その眼からは熱い雫が頬を伝っていた。


「そんなの言われたら、頼っちゃうじゃん…」









―――――


『ははは、良かったではないか』


ウォークリアを後にして二人で歩いているとルスクディーテが話し掛けてきた。


『やはりアリアの番は貴様しかおらんな、つまらん雄共の精を得ずに済んで良かったわ』


「なんの事だ?」


『アリアに力を貸す代わりに条件を出したのだ、そのひとつが雄と交わって精を得るというやつでな』


「…なぜそんな条件を?」


『我は情欲の焔ぞ、強き雄の精も雌雄が交わるのも好きなのだ、それに貴様が番と思っておったから問題はないと思ったのだ』


アリアを見ると顔を逸らしてしまうが耳まで赤くなっていた。


『なに、元より我は貴様の精が欲しかったのだ、貴様は随分と特殊な体をしているからな』


「…特殊?俺がか?」


「どういう事?」


『貴様の体は魔力量に反して放出量が少ない、そして放出されなかった魔力が貴様の身体を自然と強化している、それが貴様の類稀なる身体能力や精力の源となっているのだよ』


「…そういう事だったのか」


子供の時から他より力が強かったり先輩冒険者から絶倫だとか言われていたがここでその理由を知る事になるとは…。


『まあ安心するが良い、これからは我とアリアで貴様の精を絞り取ってやるから楽しみにしておれ』


「ちょっ…ルスクディーテ」


『別に良いだろう?貴様等は番なのだから交わるくらい良かろう、雄を悦ばせる手管…我が手ずから教えてやるわ』


艶のある声が俺達の間に響き渡る、これからラウナス教国を敵に回すかも知れないというのに俺達の間には妙な空気が流れていた…。

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