205:目覚め
「う、うぅん…」
目を覚ますと視界に映ったのは治療院の天井だった、身体を起こすとアリア達が駆け寄ってきた。
「ベルク、良かった…」
「…俺はどれくらい寝ていたんだ?」
「三日寝ていました、おそらくは限界を超えてカオスクルセイダーの力を引き出したせいかと…」
「成る程な…」
イル・イーターを倒す為にカオスクルセイダーの全軍顕現に加えてロウドとの戦い、その負荷が緊張が切れた事で一気に出てきたのだろう。
「ところで、それ…気付いてる?」
アリアに促されてベッドの横を見る、そこには剣の姿のカオスクルセイダーと…。
「は?」
白亜の剣が並んで立て掛けられていた。
「…え、いや、なんで?」
「あーうん、色々と説明するわ」
アリア達から話を聞くに俺は領域で意識を失った後にハイエンドによって助けられた様だ、意識を失う寸前の見えたのはハイエンドの翼なのだろう。
ベッドから降りてカオスクルセイダーを腰に差してからハイエンドを手に取る、特に抵抗もなく手に収まった白亜の剣からは溢れ出そうなほどの力を感じた。
「これはまた、かなり扱いが難しそうだな…」
そう呟きながらハイエンドを腰に差すとアリアが思い出した様に呟いた。
「そういえばギルドマスターがベルクが起きたらこれからの事を話したいから呼んで欲しいって言ってたわ」
「ギルドマスターが?」
「ええ、今から呼ぶ?」
「いや、身体の具合も問題ない…こっちから行こう」
―――――
「病み上がりだというのに呼び立ててしまった様ですまないね」
執務室に通されたギルドマスターはそう言って笑みを浮かべる、だが目元には隅が浮かんでおり寝る間を惜しんで働いているのだろう
「いえ、身体はもう大丈夫なのでお気になさらず」
「そう言って貰えるとありがたい、なにせ未曾有の危機を乗り越えた直後だからね。
どこも慌ただしく動いてたけどようやく形になってきたところだ」
「心中お察しします…それで話したい事とはなんでしょうか?」
「ああ、話はふたつあってね…ひとつは今回の一件でグランクルズ全体が受けた被害はかなりのものだ…ギルド連合でも世界の危機ににまで手を取り合わないのはどうかという声が上がっている」
「それは…」
「互いの復興がある程度の目処がつくまでの一時的なものだが…ヒューム大陸との規制を緩和しようという事になってね、さしあたっては帝国の称号騎士である君にその橋渡しを依頼したい」
ギルドマスターの依頼に少しだけ考える、今回の事はグランクルズだけでなく帝国も少なからず被害はあるだろう。
より大きな規模でグランクルズと交易が可能となるならば帝国にも充分なメリットはある。
アリアに目配せする、コクリと頷くのを見てギルドマスターに向き直った。
「分かりました、陛下にその旨をお伝えします」
「ありがとう…それとふたつめなんだがね」
ギルドマスターは俺を見ながら告げた。
「君を史上二人目の白金級に昇格させようという話が出ている」