199:光の魔神
「…良いだろう」
イル・イーターが手を掲げる、その下に人だけではなくエルフやドワーフ、ウェアビーストといった多種多様な姿をした白い軍勢が現れた。
「貴様が人を守るというのならば、まずは貴様を一片残らず喰らい尽くし…改めて世界を喰らうとしよう」
四方八方から白い軍勢が迫る、ガルマが勢い良く蹴散らしながら引き摺り下ろそうと伸ばされる手を斬り裂いていく。
「はっ!」
ガルマに跳躍させながら巨大剣を手にする、降り注ぐ光線を弾きながら腰の辺りを斬りつけた。
「くっ!?」
刃を振り抜いた瞬間に牙の生えた口を持つ触手が襲い掛かる、ナイフで斬り落とすが更に複数の触手が襲い掛かってきた。
迫る触手を斬り落としながら地面に着地して再び走ると待ち構えていた白い軍勢が津波の様に襲い掛かる、闇を纏った剣で斬り払いながら駆け抜けるが潜り抜けた手が俺を掴んだ。
「があっ!?」
白い軍勢が俺を引き摺り下ろしてのし掛かってくる、圧倒的な数で俺を押し潰そうする白い者達の眼は虚ろで何も感じさせなかった。
(これは…)
ガルマが嘶きを上げて体当たりをした事でのし掛かっていた者達が突き飛ばされる、緩んだ拘束を振り払ってガルマに乗って再び走った。
俺を追いかけて白い軍勢が追ってくる、さながら津波や雪崩を思わせる光景を見ながら白い軍勢の正体を察した。
「こいつらはイル・イーターに喰われた者達の残骸か、既に魂は喰らわれて奴の操り人形に変えられたのか…」
白い軍勢だけでなく上空から複数の光線が降り注ぐ、光線は幾度も軌道を変えながら俺を追尾してきて避ける内に前方を白い軍勢で塞がれ挟み撃ちにされる。
「ガルマ!」
白い軍勢とぶつかる直前でガルマが蹄鉄の火花を散らしながら止まると力を溜めた脚で跳躍する。
背後から迫っていた光線が白い軍勢をふき飛ばす、着地して再び駆けるとイル・イーターの胸部の口から光線が放たれた。
光線は真っ直ぐ俺に迫るとフィフスの姿となって襲い掛かる、振るわれた腕を剣で止めるとそれは話し掛けてきた。
「無駄だ、我はこの光の領域そのもの…貴様がどれだけ暴れて蹴散らそうと我を倒す事は叶わん」
邪悪な笑みを浮かべてるフィフスの顔を斬り裂いて駆ける、押し寄せる白い軍勢と共にイル・イーターも俺を追いかけながら攻撃してくる。
(確かに数が減ってる気配も奴を斬りつけても手応えは感じなかった…この領域の中では無尽蔵に近い力が奴にはあるんだろう)
「なら、この領域ごと滅ぼすまでだ!」
再び巨大剣を手にして魂達を励起させる、そして勢い良く地面に突き刺した。