196:星達の声(アリアside)
「通信水晶は届かないんじゃないの?」
「普通に使えばね」
通信水晶を渡された時にフィリア姉さんに言われていた事を思い出しながら伝える、もうこれしか手段はなかった。
「この通信水晶の術式を一部削って声だけの発信にするの、機能を減らせばその分だけ効果範囲も広げられる筈だって」
「…それで届くの?」
「ウォークリアまでならギリギリ届くかも知れない、後はそこにある魔道具が起動してくれれば…」
分かっている、これは希望的観測な上に届くのは魔大陸までだ…だけどこれしか…。
“私達の力を貸しましょう”
「え?」
どこからか声が聞こえる、一瞬ルスクディーテが喋ったかと思ったが違う。
声は私のバッグから聞こえてくる、取り出してみるとそれは輝く鏡と剣に盾だった。
「それは…ゼノスタンド!?」
セレナが驚きを露にする、それに構わず鏡は輝きながら語り掛けてきた。
“私はカムツヒ、このような事態になってしまったのはあの魔神の復活に利用されたが一端でもあります…だから微力ながら力になりましょう”
“…焔装の担い手よ、我等もまたこの世界で生まれた命、力を貸そう”
「それはありがたいけど、どうするの?」
“私の力でその魔道具の効果を増幅させます、そして増幅した力をゼノスタンドで吸収して拡散させるのです”
“緑装の担い手は魔道具に魔力を込めよ、汝の風の魔力を乗せれば世界中に声を届けられる筈だ”
“涙装の担い手はトゥルーティアーと共に私を使ってください、焔装の担い手はルスクディーテと力を合わせて貴方の思いをゼノスタンドに込めてください”
「…分かったわ、やりましょう」
カムツヒをセレナに、通信水晶をシュリンに渡してゼノスタンドを手に取る。
「行きます!」
それぞれ位置に着いて構える、セレナとトゥルーティアーの魔力が込められるとカムツヒから眩い光が放たれて通信水晶を照らした。
光を受けた通信水晶にシュリンがエイルシードと共に魔力を込める、力は光線となってゼノスタンドの盾へと放たれた。
「アリア!」
「うん!」
剣を真上に掲げる、盾から流し込まれる膨大な力は剣を通して空高く放たれた。
「届っ……けぇぇぇっ!」
空へと昇った光は波紋となって拡がっていく、使徒達を超えて思いを乗せて…。
それは世界中の人々に伝わった、三人の少女の願いと強大なる魔神に一人で立ち向かう騎士の姿が。
終末の如き光景が広がる世界でそれは鮮明に伝わった…。