195:終末の光景(アリアside)
それはグルシオ大陸だけでなくヒューム大陸にも出現した。
天を衝く巨大な光の柱、それはミルドレア帝国にベルガ王国と人が集まる地に現れたそれを人々は見上げた。
光の柱から湧き出る様にイル・イーターの使徒達が姿を現す、地上には獣や人型といった様々な姿の者が大地を踏みしめ、空には翼を持つ者達が空を覆う様に現れた。
共通しているのはそれらは全て白い光を固めて作られたかの様な、白い影の様な体をしていた。
使徒達は地上から、空から人が集まる場所へと進軍する、そこにある命を奪う為に。
―――――
「あれは…」
光の領域を突き抜けてきた柱から現れる白い影の魔物達は空を覆う様に飛んでいく…そしてその幾つかが私達を捉えて迫ってきた。
襲い掛かってきた天使の様なものを迎撃する、振るわれる槍を避けてすれ違い様に斬り裂くと光の粒となって霧散した。
次々に襲い掛かる魔物達を三人で協力して倒していく、互いに背中を合わせながら呟いた。
「なんなのコイツ等」
「イル・イーターの使徒だ、おそらく領域の外の命を回収する為に生み出したのであろう」
「…では狙いは世界中の人々という事ですか」
焔の斬撃で迫ってきた魔物達を薙ぎ払う、ルスクディーテの言った事は今すぐにでも姉さん達や各国に伝えなければならない事だった。
「どうにかして伝えないと…」
「どうやって?多分私達が展開してもコイツ等の方が早い」
シュリンが魔物達を次々と射ち落としながら返す、既に大部分が街がある方へと飛んでいってしまっている以上、私達が全速力で戻ろうとしてもこうして足止めを受けてしまうだろう。
何より戻るには距離がありすぎる、それにあの柱がここだけという確証もない、伝えるなら街ひとつではなく世界中に伝えられなければ駄目だ。
…ひとつだけ方法はある、だけどまず失敗するだろうし更に言えばそれをやる暇がない。
焦りだけが加速してる中でソレは来た、光の竜が私達に向けて迫ってきて…。
「道を開けんか馬鹿共!着陸の邪魔をするな!」
横から黒く巨大な影が竜を突き飛ばす、地面に落ちた竜を踏みつけると腕の砲で頭を滅多撃ちにして霧散させた。
「ええい!塔が崩れたかと思えばこれか!腰が落ち着く暇もない!」
「ブラストペイン!無事だったの!?」
幾つもの装甲に身を包み背中から火を噴射させて現れたブラストペインが私達を見る、思いがけない存在に驚きはしたが私はすぐに思いついた。
「ブラストペイン、力を貸して!」
「何?」
「このままだと世界中の人達がイル・イーターの餌食になる!少しでも早くこの事を知らせないといけない!五分だけで良いから私達を守って!」
なるべく簡潔に要望を伝える、ブラストペインは一瞬の沈黙の後に杖を斧に変形させながら背中を向けた。
「俺の体も長くは保たん!急げ!」
「…ありがとう!」
ブラストペインが魔物達の相手にしている間にセレナとシュリンを呼ぶ、賭けになると分かっていてもやるしかない。
「アリア、どうするの?」
「これを使うわ」
そう言って私はフィリア姉さんから渡された通信水晶を取り出した。