191:突破(アリアside)
焔を纏った私は一息で魔物達を焼き払いながら背中の焔を翼にして進む。
立ち塞がるアイアンゴーレムを白熱化した剣で斬り裂く、襲い掛かるシャドウストーカーとブラックウィドウ達を紅蓮の焔で燃やしながら道を切り開く。
フィフスが再び何かをしようと手を掲げる、腰に差していた長剣を投擲すると長剣は肩に刺さって行動を阻止した。
(ベルクに教わっといたのが役立ったわね)
目の前にあるものを蹴散らして真っ直ぐと飛んでフィフスが反応する暇も与えず剣で胸を貫いた。
「ぐっ…」
焔によって纏っていたローブが焼かれる、その下から現れたものに私は驚愕した。
「フィフスじゃ…ない?」
ローブの下にあったのは女の顔だった、顔の半分は黒い影の様なもので覆われており淀んだ眼からは生気をまるで感じさせなかった。
「もう…遅い…」
剣を中心に女の体は灰になっていく、だがそれを意に介さず女は舌を動かした。
「影は、光へと還り…光は世界をあまねく照らす…誰にも、止められない…」
女はその言葉を遺して灰になっていく、長剣を差し直して周囲を見回すと魔物達も現れなくなり部屋には静寂が戻った。
(フィフスは一体どこに…いえ、今は核を壊さないと!)
祭壇へと跳んで一番上にある核へと剣を振り下ろす、真っ二つになった核は輝きを増して爆発すると粉々に砕け散った。
「これで…」
床に着地すると部屋を覆っていた古代文字が消えていく、なんとか目的は達成できたと息を吐いた。
「…っ!?」
その直後に部屋が…塔が鳴動する、そして部屋の壁が動き始めた。
「セレナ!シュリン!塔から離れるわよ!」
複雑に組み変わっていく塔の壁の隙間から外が見える、二人も展開して外に向けて飛翔した。
私も外に出ようとすると足下に祭壇から転げ落ちた鏡に剣を収めた盾が目に入る、何かを訴えかけられた様な気がしてふたつを拾って塔から脱出した。
空中で二人と合流しながら塔を見る、そこには塔の外壁に古代文字が浮かんでおり最上層は組み変わって頂には白い玉座があった。
「…まさか、私達が核を破壊するのを見越していた?」
セレナが変貌した塔を見て呟く、それを聞いて全員で顔を見合わせた。
「あの術式と核は本物でした、だけどフィフスは核が破壊されるのを引き金に設定して術式を組んでいた…これなら目の前の事に説明が付きます」
「…私達はものの見事に踊らされたって訳ね」
思わず歯噛みしてしまう、塔の内側に刻まれていた術式の核を壊した事で塔の外側に刻まれていた術式が起動する様にしていたのだ。
内側にあからさまに術式を刻んでいたのは外側の術式を気付かせない為の演出でもあったという事だ。
「っ!、あれは…」
シュリンが指を指す方を見るとその方向から玉座へと向かう光がある、光の正体は遠目ながらも見えた。
「ロウド!?」
白亜の鎧を纏ったそれは玉座へと座る、そして塔全体を光が包んだ…。