188:祭壇(アリアside)
塔の揺れからベルクとロウドの戦いが激しさを増している事が分かる、揺れながらも先に進んで昇って行くと…。
「この先に魔力の流れが集まってる」
「そこに核があるのね!」
シュリンの先導で屋上の下…最上層の部屋へと辿り着く荘厳な扉を開け放って部屋の中に目を通す。
そこはこれまでとは全く違う様相となっていた、元は白かったのであろう壁や床は朱く輝く古代文字によって埋め尽くされ、その影響か古代文字が刻まれた周囲は黒く変色していた。
複雑な構成で組まれている術式から放たれる禍々しい気配が肌を刺す、そして部屋の奥には祭壇があり様々な武具と共に大きな水晶が一層邪悪な輝きを宿していた。
「あの水晶…間違いない、あれが核!」
「っ!…二人共、やるわよ!」
焔の斬撃と水の槍、風を纏った矢が水晶に向けて放たれる、だけど影の壁と杭が床から現れて攻撃を阻んだ。
床に黒い水たまりの様な影が現れる、影からは全身を黒いローブで覆ったフィフスが浮き上がる様に現れた。
「フィフス!」
「させませんよ…ようやく我が大願が叶おうと言うのですから」
その言葉と共に床からシャドウストーカーやブラックウィドウといった影の魔物が部屋を埋め尽くす様に現れた。
「本っ当に…ろくでもないわね!」
一斉に襲い掛かってくるシャドウストーカー達を真一文字に斬り裂く、セレナが結界で来る方向を狭めてシュリンの矢がブラックウィドウを仕留めていく。
フィフスは更に腕を振るうと壁からアイアンゴーレムが現れる、そしてフィフスが聞いた事もない詠唱を唱えるとアイアンゴーレムやシャドウストーカー達に朱い古代文字が刻まれていき攻撃がより激しくなった。
「まさか…“狂気付与”!?」
“狂気付与”は闇魔術に分類される魔術のひとつ、過去に邪教の教祖が信者にこの魔術を使って死を恐れぬ狂戦士の群れに変えたという経緯から禁術に指定された魔術。
それを魔物に使うなんて…。
魔物達が再び勢いを増して迫ってくる、体の半分が消しとんでも矢に体を侵食されながらも襲い掛かり圧倒的な物量でセレナの結界に罅を入れ始めた。
「新しい結界を貼ります!」
セレナが破られる直前に新たな結界を構築する、シュリンも矢を数ではなく一撃の威力が高いものに変えて応戦する。
だけどこちらが魔物を倒してもフィフスは更に数を増やして仕向けてくる、それだけではなく“狂気付与”に加えて補助魔術を掛けて魔物達を強化していた。
迷っている暇はない、この場を切り抜ける為にも私は魔物達を薙ぎ払って生まれた隙に剣を構えた。
「セレナ!結界を閉じて!」
セレナがシュリンと一緒に結界の中に入るのを見て殺到する魔物に向けて駆ける、そして力ある言葉を叫んだ。
「焔装展開“情欲の麗焔”!」
紅蓮の焔が部屋中を吹き荒れた…。