187:高揚
鍔迫り合いを解いて互いに距離を取る、ロウドの竜腕に光が灯ると五指から光線が発射された。
地面を這うかの様に体勢を低くしながら走る、上を過ぎ去る光線は壁を貫いて消えていくのを感じながら掬い上げる様に半月斧を振るう。
ロウドは逆手に持った剣を半月斧の穴に通す様にして床に突き刺して止める、無理矢理止められた半月斧を手放して右腕に剣を持って振るう。
竜腕で剣の刃を掴まれる、黒い雷と白い光が爆ぜる音を鳴らしながら拮抗しておりロウドは剣を持ち直して横薙ぎに振るってきた。
剣を放しながら後ろに跳んで剣を避ける、追撃してきたロウドの一撃を左手に出した円盾で防いだ直後に竜腕で掴まれ円盾が下ろされた。
「そう来るよな!」
あらかじめ右手に展開していた鎖槌矛が弧を描く様にしてロウドに迫る、ロウドは跳躍して俺の頭上に跳ぶと竜腕から光線を発射した。
真上から迫る光線を円盾で受ける、余りの威力に脚が床にめり込み全身にのし掛かる力を歯を食い縛って耐える。
光線を受けた直後の俺にロウドは剣を槍に変えて放つ薙ぎ払いを“風跳”で真上に跳んで避ける。
宙を蹴って背後に回ると巨大剣を風と共に射出する形で展開してロウドに叩きつけた。
「むっ!?」
巨大剣ごとロウドは壁へと叩きつけられる、すかさず弓矢を手にして数十もの矢を付与魔術で強化して射ち続ける。
ロウドが叩きつけられた壁の周囲を破壊音と爆風が荒れ狂う、剣を手にして構えていると土煙をロウドは身の丈ほどもある白亜の盾を展開しながら突き破ってきた。
塔型大盾を展開して迎え撃つ様に構える、盾と盾が衝突する音が轟き衝撃で再び弾かれる様に離れた。
ロウドは光が宿った剣で足下の瓦礫を巻き上げる、瓦礫と土煙を塔型大盾で防ぐがロウドは再び凄まじい力と光を宿した剣を目前で放つ。
「“天裂竜爪”」
光の奔流が壁を貫く、ハインルベリエの防壁以上の強度を誇ると言われるダンジョンの壁に大穴が空くが…。
「“風鳴衝波・重”」
直前に盾を手放して屈んでいた俺は両手に風と手甲を纏ってロウドの鳩尾を打ち抜く、ふたつの風によって増幅した振動と衝撃によってロウドは瓦礫を巻き上げる様に床を削りながら立ち止まった。
「く…くくっ…はははははは!」
ロウドは笑う、突然の行動に呆気に取られるがロウドはひとしきり笑うと俺を見た。
「やはり戦いとは互いに相手を殺し得る力を持ってこそだ!圧倒的な力で有象無象を蹴散らすなど何が面白い!互いに命を燃やし、最後に立っているのはどちらか一人であってこそ戦いだ!」
ロウドは歓喜の声を上げて語る、それは渇望していたものをようやく見つけた探求者の様だった。
「ベルク!運命があるとするならばお前こそがそうだ!俺の退屈な人生を壊す為に世界が生み出した宿敵だ!」
「…俺が宿敵、か」
高揚を隠す事なくロウドは語る、命が懸かっている状況、互いに殺し合ってるというのに…。
「…ああ、クソ」
そして俺もどこか認められたかの様で高揚している様だった。
互いに剣を掲げる、そして通じ合う様に力ある言葉を口にした。
「軍装展開“黒纏う聖軍”!」
「竜装展開“生命の到達点”!」
漆黒の嵐と白亜の光が対立した…。