185:再戦
「お前達は優秀だ」
ロウドはそう言いながら俺達を示す、言葉の真意が分からず身構えているとロウドは言葉を続けた。
「バランシウスは破ったルールの数だけ権能が付加される、元々持っているものを加えて最大で十の権能…今回のは四つだったからお前達が破ったのは三つ」
バランシウスの魔石を蹴り飛ばしながらロウドはこの階層の仕組みを話す、そして笑みを浮かべなから俺達を見た。
「並の者ならこの仕組みにハマって強化されたバランシウスと戦う事になるだろう、それをこの程度で済ましたのはそれだけ冒険者として優れている証だ」
クックッと笑いながらロウドは称賛を口にする、俺はそれに応えず剣を手にしながらアリアに促す。
「先に行け」
「…大丈夫なの?」
「ああ」
アリア達は顔を見合せ頷くと階段へと向かう、横を通るアリア達をロウドは素通りさせた。
「死んだら承知しないから!」
「御武運を…」
「…任せる」
アリア達はそう言い残して上へ向かう、残された俺とロウドはしばらく無言で向き合っていたが俺から口を開いた。
「分かってはいたが、通しても良かったのか?」
「利害が一致しただけでフィフスの企みが成功しようとしまいとどうでも良い、強き者との戦い…俺はそれが出来れば後は知った事ではない」
ロウドはそう吐き捨てると改めて俺を見据えて笑う、それは心の底から喜ぶ様な笑みだった。
「本当は三十層まで行くつもりだったがお前達は俺の予想を越えて早く上がってきた…あの娘達も随分と強くなった様だ。
…だが貴様はその中でも頭抜けた強さを得ている」
ロウドはそう言って白亜の剣を手に取る、それと同時に巨大な竜の幻視するほどの圧が放たれた。
「確かめてやろう…貴様が得た力を!身につけてきた強さを!貴様の研ぎ澄ましてきた牙…俺の牙で噛み砕いてくれる!」
「…ブレないんだな、アンタは」
エリクサーを一息に飲み干す、どうせこの男と戦っている時に飲んでいる暇なんてない。
「俺はアンタと同じ道は歩かない」
カオスクルセイダーの魂達を励起させる、漆黒の剣は俺の意志に応える様に刃を輝かせる。
「俺は俺の道を行く、俺の譲れないものの為に戦う…立ちはだかるならフィフスだろうとアンタだろうと越えていく!」
「ふ…やってみるがいい」
剣を構える、ロウドも剣をだらりと下げて相対する。
部屋を静寂が支配する、互いの呼吸や鼓動の音すらしていないと錯覚するほどの沈黙の中でバランシウスの戦った時に崩れた瓦礫のひとつが床に落ちた。
同時に床を蹴って迫る、漆黒の剣と白亜の剣がぶつかり合う剣戟音が静寂を切り裂いた。
「道を…開けろ!」
「ならば…力ずくでだ!」
あの日の屈辱を晴らす為にも俺は再び最強と対峙した…。