179:鋼の翁
「思い上がるなよ虚像共が!」
巨躯を有した魔物が叫びながら斧を振るう、幾多もの装甲に覆われたその体はガードマシンを構成している金属と似ているがところどころに傷や錆が浮かんでいた。
「魂のないガラクタ共め!俺の時代の戦い方を教えてやる!」
斧によって一体を腰から両断すると傍にいたガードマシンを床に叩きつけて頭を踏み潰す、魔物は髭の生えた老人の様な顔をしており銃を乱射してくる残り一体を腕を変形させた砲を向けて放った。
強固な装甲を破壊されたガードマシンは崩れて魔石に変わっていく、魔物は魔石を拾い上げると口に運んで呑み込んだ。
「ええい!まるで足りん!日に日に減っていきおって!これでは俺が朽ちるのも時間の問題か!」
斧は杖に変形するとさっきまで荒々しい戦いをしていたとは思えないほど背を曲げて腰を叩く、鎧の一部を落としながら杖をつくその姿は朽ちた鎧を纏った老人とでも言うべきものだった。
「魔物…よね?」
「見た限りではな…」
「そこにいる貴様等!隠れてないで出てこい!」
魔物が俺達のいる方へ向きながら叫ぶ、少しだけ逡巡するが大人しく魔物の前へと出た。
魔物は覗き込む様に俺を見ると手にしたカオスクルセイダーを見て顔をしかめる。
「人間…?しかも貴様等全員が魔装を有しているのか!?」
「魔装?」
「その武器だ、一振で一国を傾ける力を有する武具…かつての創造者達が生み出そうとした魔道具の頂点たる存在だ!」
この短い会話の中で随分と気になる言葉が出てきたがまず一番気になる事を聞く事にした。
「アンタは何者だ?魔物じゃないのか?」
「魔物だと!?俺をあんな虚像共と一緒にするな!俺はブラストペイン!創造者達によってこの塔を守る為に造られた鎧人だ!」
「…アンタが魔物じゃないってのは分かったが塔を守る?俺達はフィフスがこの塔でろくでもない事をしようとしてるのを止めに来たんだ」
「フィフス?それは白い髪をした剣士の事か!?」
「違う、その剣士はロウドといってフィフスに協力している…知っているのか?」
「俺を二度も破壊し同胞をガラクタに変えた男だ!俺がこの今にも崩れ落ちそうな身体になっているのも奴のせいだ!」
ブラストペインは杖で床を突きながら激昂する、その度に小さな部品が落ちるのも気にせずまくし立てようとするがランタンの色が戻るのを見ると不機嫌さを隠さず舌打ちをした。。
「ええい!こんなところでは落ち着いて話も出来ん!ついてこい!」
盛大に足音を立てながらブラストペインが部屋を出る、俺達は一瞬だけ顔を見合わせて考える。
「どうするの?」
「…敵ではなさそうだ、ついていこう」
そう結論を出して後を追った。