178:現れない魔物
それからはシュリンだけでなく俺も反響探知等を行いながら慎重に進む、それで分かった事だがガードマシンは視覚だけでなく一定の距離まで近付くと魔力を探知する事も出来るという事だ。
試しに魔石を中の魔力を放出させて反対方向に投げるとそちらに向かった、分かるまでに二回くらい見つかって戦う事になったがそれでもこの階層の半分まで上がっては来れた。
「どこかで休めれば良いが…」
全員で見つからない様にしながら先に進んでいるからか少し疲れの色が見て取れる、特にシュリンは索敵や斥候を兼ねているからかなりの負担が掛かっている筈だ。
「…変」
先を進んでいたシュリンがそう呟きながら止まった。
「どうした?」
「この階だけど魔物の気配が感じない、それにここだけじゃなくてこの階層自体の魔物が少ない気がする」
「…薄々思ってはいたがシュリンもそう感じるか」
五層近く上がってきたが感じたのは同じものだった、確かにこの階層は見つからない様に進むものなのだろうがそれでも魔物の数が下層に比べて少なく感じるのだ。
何か見落としがあるのかと考えていると再びランタンが赤く明滅するとあの声が鳴り響いた。
「“ガードマシンが破壊されました、警備システムに基づきラビリンスの構造を変更します”」
「はっ!?」
「…え?」
「…何?」
俺達が驚きの声を上げてる間に迷宮の構造が変化していく、巻き込まれない様にしながらも起きている事を考える。
「どういう事!?私達この階では戦ってすらないのに!」
「新しい罠があるのでは…?」
「…そういう訳ではなさそうだ」
構造が変わりこそしたが俺達がいるのは部屋ではなく通路だ、つまりガードマシンと戦っているのは別の者という事になる。
問題はそれが誰かという事だ…。
「全員耳を塞げ、シュリンは眼も閉じておけ」
三人が耳を塞ぐのを確認すると魔石を取り出す、この塔で手に入れた魔石は換金すれば金貨に匹敵するくらいの価値がつくほど上質のものを魔力を込めて地面に叩きつけた。
封じられていた魔力が風を巻き起こして拡散する、俺は眼を閉じて拡散する魔力を感じ取る。
…この階層の壁は魔力を通さないが逆を言えば魔力が通りところは繋がっている通路となっている、感じ取れた魔力の形を頭に浮かべていけば魔力を感じない空いた空間が部屋である可能性が高い。
「こっちだ」
眼を開けて走る、頭に浮かんだ図の通りに進んでいくと長い壁を見つけて辺りを見回す。
壁に扉とレバーがあり、レバーを下げるとランタンの色が戻って扉が開いた。
扉が開くと中から戦闘音が響いてくる、慎重に中を伺うと奇妙な光景が眼に映った。
部屋にいたのは俺達が戦ったのと同じガードマシンが複数とその倍の巨躯を誇る金属の体をした魔物が戦っていた…。