174:眩んだ眼
部屋中に放たれた雷をセレナが水の結界で防ぐ、雷は結界の表面を流れていき消えていった。
雷をやり過ごしてから動く、俺の倍近くの背丈になったグリドウェンは大きくなった剣を横薙ぎに振るってきた。
空中で回転する様に身を翻しながら剣を避けると膝裏を斬りつける、さっきよりも剣が通り難くなってる感触があり眉をしかめると円月輪と剣が襲い掛かってきた。
反対側からアリアも攻撃しているが襲い来る斧と杖と打ち合っている、グリドウェンは力だけでなく戦い方も強くなっていた。
(このままじゃジリ貧だな)
復活する理由を突き止めない限りグリドウェンを倒す事は出来ない、迫る攻撃を凌ぎながらも周囲を見回した。
(本体が別にあるのか?それともこの部屋自体に何かしらの仕掛けがあるのか?)
「ベルク!」
アリアの声の直後に振るわれた斧を盾で受ける、床を転がって壁際まで来たところでグリドウェンは杖を向けてくるがシュリンの矢が杖を持つ腕を射抜いた。
壁に手をつきながら立ち上がった時に壁の装飾が視界に入る、ふと何かを感じて見てみると装飾はこれまでの金貨に掘られていた者達を象っていた。
気になったのは像の眼だ、全てが黄金で造られている中で眼だけがあの金貨と同じ魔力を宿した水晶で造られている。
(二度目の時に光っていたのはこれか)
水晶の眼は部屋の黄金を映してる為に一見すると黄金の輝きに染まっていた、まるで財宝を目の前にした者の様に…。
「…これか?」
剣の柄尻を水晶に叩きつける、水晶は砕ける音を立てて割れ落ちると輝きともに魔力が消えた。
それを確認して再び風を纏ってグリドウェンに突進する、アリアと戦っていた横から放った一撃は杖を持った腕を斬り落とした。
「アリア、セレナ、シュリン、こいつは俺が相手するから部屋中の彫像の眼を全部壊してくれ」
「…それが仕掛けって事ね」
「…上のは私が壊す、二人は下のをやって」
シュリンはそう告げて部屋の手が届かない場所にある彫像の眼を射抜いていく、アリアとセレナも分かれて眼を壊していった。
グリドウェンがそれを阻止しようとしてるのかアリア達の方へ向かおうとするが手斧を仮面に投げつけて気を引いた瞬間に肩に乗って刺突剣を突き刺す。
暴れながら斧で斬り落とされる直前に飛び降りて斧槍を円月輪の内側に引っ掛けて取り落とさせる。
グリドウェンは剣と斧を振り回しながら迫ってくるがアリア達から遠ざかる様に避けながら下がる、ある程度の距離が空いてから斧槍を手に応戦した。
斜めに振り下ろされる剣を屈む様にして避ける、足下を払う様に振るわれた斧を“風跳”で跳躍して避けながら斧槍を頭に叩きつける。
たたらを踏んだグリドウェンの仮面に亀裂が入る、すると円月輪を持っていた手から黄金の槍を生み出し、斬り落とされた腕に黄金の義手を装着して再び迫ってきた。
振るわれる三つの武器が繰り出す猛威を凌ぐ、突き出される槍をかわし、薙ぎ払われる斧を避け、振るわれる剣を受け流す。
「ベルク!」
アリアの声を聞いて俺は鎖を手にすると振り下ろされた槍を避けながら跳躍する、グリドウェンの頭上を過ぎる瞬間に鎖をグリドウェンの首に巻き付けると背後に着地しながら力の限り引っ張ると巨体が仰け反って動きが一瞬止まった。
「やれ!」
俺の言葉と同時にアリアの焔を鏃に纏ったシュリンの矢が亀裂の入った仮面ごと頭を穿ち砕く、グリドウェンは倒れると崩れていき魔石と変わっていった…。