173:黄金の魔人
「カァッ!」
グリドウェンが馬車の車輪並の大きさの円月輪を投擲してくる。
左右に分かれて避けると円月輪は床を削りながら弧を描いてグリドウェンの手に戻る、そして剣を振りかぶって襲ってきた。
すかさず剣で受けるがグリドウェンは残る三本腕の斧、杖、円月輪を振るってきた。
剣を槍に変えてグリドウェンの剣と円月輪を、もう片方の手に双頭剣を握って杖と斧を受け止めて漆黒の鉄靴を纏いながら前蹴りを繰り出す。
(重い!?)
前蹴りで後ずさったグリドウェンにアリアが焔を纏った斬撃で追撃する、焔に包まれながら更に後ろに下がるグリドウェンの足をセレナが水で拘束してシュリンが射った矢が額に直撃して仮面ごと頭を砕いた。
「え、終わり?」
グリドウェンの体が床に倒れる、だが頭を失った体から放たれた強い光が部屋中の装飾に反射した。
「くっ!?」
腕で眼を庇いながらも警戒していると光が弱まる気配を感じ取る、僅かに瞼を開けて見てみると頭を再生させながら立ち上がるグリドウェンの姿があった。
再生を終えたグリドウェンの仮面は更に禍々しい形となっており、更には細身に思えた体も手にした武器も一回り大きくなっていた。
「強くなって復活しただと?」
グリドウェンがケタケタと嗤いながら再び襲い掛かる、俺とアリアで防ぐがさっきよりも強い力で押し込まれる武器が見かけだけではないと物語っていた。
シュリンが矢を三本同時に射つ、それぞれの曲線を描いて飛ぶ矢を察知したグリドウェンの体から滲む様に黄金が出て矢を阻んだ。
グリドウェンが円月輪を投擲すると凄まじい勢いで回転してセレナとシュリンに迫る、セレナが発動した水の盾が円月輪を防ぐが回転が止まらない円月輪は水の盾を徐々に削っていく。
「アリア!」
闇を纏った剣で斬りつける、黄金の膜ごと裂かれたグリドウェンが体勢を崩した隙に俺とアリアで腕を斬り落とした。
「グギッ…」
全てにの腕を斬り落とされたグリドウェンの頭を兜割剣で叩き割る、頭を叩き割って胸まで裂いて止まった刃から闇を解き放った。
「これならどうだ」
刃を中心に起こった黒い嵐は螺旋を描きながら轟音と共にグリドウェンの上半身は粉々にふき飛び、更に兜割剣を振り下ろして下半身も砕いた。
グリドウェンが粉々に砕かれると円月輪も勢いを失って落ちる、だがその直後に部屋の至るところが輝き出して部屋中を強い光が包んだ。
光の中で落ちた武器がひとりでに集まっていくと巻き戻されていく様に輪郭が形作られていく、武器もそれに伴って更に形を変えていった。
そして、更に強大な姿になったグリドウェンが武器を打ち鳴らしながら立ち上がった。
「まさか…不死身とでも言う訳?」
「どうだろうな」
アリアの呟きに答えながらも思考を巡らせる、扉の彫刻と実際に戦ってみてどこかに見落とした糸口はないかを考える。
「ケヒヒッ!」
グリドウェンが嗤いながら杖を翳す、嫌な予感がしてアリアと一緒に下がると翳された杖から部屋中に雷が放たれた…。