172:争いを起こす魔
「ふっ!」
ギロチンに扮したゴーレム達を掻い潜り、天井とゴーレム繋ぐ鎖を斬りながら他のゴーレムに飛び移っていった。
下に落ちたゴーレムをアリアが斬り裂く、届かない位置に落ち変形して襲い掛かろうとするゴーレムはセレナとシュリンが魔術と矢で倒した。
鎖を飛び移りながら天井に貼り付く様な形で存在する巨大ゴーレムに迫る、巨大ゴーレムは周囲のギロチンゴーレムをひとつのギロチンへと変形させて放った。
風を纏ってギロチンの側面を回転する様にしながら避ける、傍を通りすぎる何重にも絡まった鎖を伝いながら巨大ゴーレムの顔まで迫ると巨大剣で顔を貫いた。
巨大ゴーレムが貫かれた顔を中心にひび割れていく、額に嵌まっていた金貨が落ちて俺の手に収まった。
「ふう…」
下に着地しながら金貨を確認する、槌を持った職人の像が彫られた金貨はいっそ忌々しさを感じる程に精緻な造りをしている。
金貨をプレートに嵌めて扉を開ける、次の階段を昇ったところでアリアが息をついた。
「ようやく中ボス部屋ね」
「ああ」
この階層は鍵となる金貨を手に入れる必要があった、最初の戦士の金貨の後は魔術師や弓使いといった彫られた像ごとにやる事も変わっていく。
俺一人なら大分苦戦しただろうがアリア達のお陰ですんなりと通れた部屋もある、此処に来てパーティの重要性というのが改めて分かってきた。
「此処か…」
階段が終わった先に古代文字と彫刻が彫られた巨大扉がある、彫刻は様々な姿格好をして争う人々とその上で巨大な四本腕の魔人が見下ろしている者で古代文字はこう記されていた。
“平和に飽いた者達の下に一柱の魔が降り立った。
魔が生み出す黄金は人々の欲を狂わせ、瞬く間に争奪と闘争が蔓延した。
多くの命が失われた、されど最も血に染まり命を奪ったのは争い起こす魔が持つ黄金の刃なり。
その魔の名はグリドウェン、魔がもたらす輝きに目を眩ます事なかれ”
「うぅん…」
ダイボラスは予め情報を得ていたから考察はそこまで難しくなかったがここからはこの扉と実際に戦ってみて考察していくしかない。
アリア達にも内容を共有して気を引き締める、そして扉を開いた。
部屋の中は金の装飾で埋め尽くされた絢爛という表現が似合うものだった、部屋に入ると扉が閉まり中央に鎮座していた深紅の衣を纏った黄金の像が動き出す。
黄金の像は青い肌をした四本腕の魔人となって俺達の前に立ち塞がる、四つの黄金の武器を打ち鳴らしながら悪魔を模した仮面からケラケラと嗤う声を響かせた。
「…さしずめ、“争魔のグリドウェン”ってところか」
俺達が構えるとグリドウェンは飛び上がって俺達へと迫った…。