171:奪取
(確かこの辺りで…)
立ち塞がるアンデッド達を斬り伏せながら部屋の中央まで戻る、炎が吹き出る穴の近くで辺りを見回すが頭の中では最悪のパターンを想像していた。
床は不揃いな格子状でその下には杭が並べられている、もしも床の隙間から落ちていたら杭が並ぶ床下に潜って探さなければならないのだが…。
「…あった!」
幸いな事にミイラを倒した穴の付近を探していたら炎の光に照らされる金貨を見つけたので急いで取ろうと走る。
上からミイラが落下してくる、床に落ちた衝撃で金貨が宙を舞った。
「ふっざけんな!」
目の前に落ちてきたミイラに剣を投げながらも金貨に向けて手を伸ばしながら風を纏って跳躍する。
「良し!」
床の隙間に落ちるギリギリでコインを掴む、だが勢い良く跳躍したのと取る為に無茶な体勢をした為か上手く着地出来ず床を転がって先にある隙間に吸い込まれる様に落ちてしまった。
「くっ!?」
落ちきる前に縁を掴んでぶら下がった状態になる、すぐ下にある杭に一瞬背筋を震わせながらも“風跳”で跳び上がる。
床の上へと戻って顔を上げると周囲に集まっていたアンデッド達が一斉に襲い掛かってくる、咄嗟に大楯を出しながらしゃがむと重なる様にのし掛かってきた。
「ぐっ…」
アンデッド達が折り重なる様に殺到する、山の様にのし掛かってくるアンデッド達の重さに歯を食い縛りながらも膝を立てる。
「…ガルマ!」
黒い風を巻き起こしてアンデッド達をふき飛ばしながらガルマが嘶きを上げて現れる、手綱を引いて命じるとガルマは格子状の床をものともせずに走り出した。
蹄鉄を鳴らしながら最短距離で部屋を駆ける、立ち塞がるアンデッドを蹴散らし、飛び掛かってくるミイラを斬り伏せながら扉の前まで向かうとアリア達も周囲に集まっていたアンデッド達を倒して道を開いた。
ガルマから飛び降りて転がる様に着地しながらプレートの窪みに金貨を嵌め込む、するとプレートが淡く輝く線を発して扉の隅々まで届くと重々しい音を響かせながら開いた。
「今だ!」
全員が入ったのを確認して俺も入ると力を込めて扉を閉める、バタンと大きな音を響かせながら閉められた扉の向こうから叩く音がするが少しして気配が遠ざかり消えていった。
振り返ると壁に寄り掛かる様に座り込むアリア達と上へと登る階段があり俺も扉を背もたれにしながら座った。
「…少し休憩しよう、全員ポーションはまだあるか?」
俺の言葉に全員は頷いてそれぞれのポーションを飲み始める、俺も独特の薬味を感じさせるポーションを喉を鳴らしながら飲み干して一息つくと思わずため息をついた。
(…これが次の中ボス部屋まで続くのか)
「…こんな事言っても意味はないって分かってはいるけど」
アリアがポーションを飲み干しながら呟いた。
「このダンジョンを造った人がいるんなら一発ぶん殴ってるわ」
「…もしいるなら俺も助走をつけて殴ってるな」
俺とアリアの言葉にセレナとシュリンも黙って頷いていた…。