170:悪意の罠
錆びた剣を振りかぶってきたミイラの頭にトーチを叩き込みながら右手に出した弩の矢に闇を纏わせて撃つ事で反対から迫っていたミイラ達を一直線に貫く。
床の隙間から出されたミイラに足首を掴まれるが力を込めて足を上げて隙間に挟んで折り蹴ると床下の杭に落ちて刺さった。
(一体一体は弱いが…数が多すぎる!)
常に百近くのアンデッド達が襲い掛かるのは精神的に負担がある、更には足場の悪さも相まって普段以上に気をつけて戦わなければならない。
急いで奥に向かわなければならないが奥の階段を守る様にアンデッド達が密集している、倒すのに手間が掛かればやがて数の力で押し潰されるのは明白だ。
(…一発だけなら!)
「しゃがめ!」
密集したアンデッド達の目前まで到達したところで右手に出した蛇腹剣に闇を纏わせながら振るう。
振るうと刃が外れていき中で繋がっていたワイヤーによって鞭の様に伸びてしなりながら唸りを上げる、その場で一回転する様に振るう事で密集していたのだけでなく後方から迫っていたアンデッド達もまとめて斬り裂いた。
「…次からはもっと早くそれ使わない?」
「使い慣れてないんだ」
しゃがんだ体勢から呟いたアリアにそう答えながら階段があるであろう扉の前に辿り着く、セレナが結界を貼ってアンデッド達を防いでる間に開けようとするが頑丈な造りをした扉はびくともしない。
(何か仕掛けがあるのか!?)
改めて扉を観察する、そして扉のすぐ下にあるものを見て思わず固まってしまった。
「…は?」
扉の下にはプレートがあった、そこには古代文字で“争奪と闘争に勝利した証を捧げよ”と彫られた一文と戦士の像の丸い窪みがあった。
思わず現実逃避したくなるがそれとは別に冷静な思考が辿り着いた答えに拳を打ちつけたくなる衝動が沸き上がった。
…あの金貨は罠だった、この部屋に入った者があの金貨を見つける事でアンデッド達が起きて襲い掛かる様に仕組まれていた。
だが同時にあの金貨はこの先へ進む為の鍵でもあったという事だ。
アリア達もプレートを見て察したらしい、一瞬ではあるがその場で全員固まってしまった。
「えっと…ベルク?」
「…金貨を拾ってくる、アリア達は此処で進路の確保と一部のアンデッド達を引き付けてくれ」
「探すなら私の方が…」
「一部を引き付けても多数に囲まれるのは変わらない、遠距離から援護出来るシュリンより無理矢理突破出来る手段の多い俺が行った方が良い」
剣に闇の嵐を纏わせながら振り返る、結界に殺到するアンデッド達にうんざりしながらも構えた。
「セレナ、俺の合図と同時に結界を解いてくれ」
「分かりました」
「アリアとシュリンは結界が解けた瞬間に一緒にこいつらをふき飛ばしてくれ、その後は此処に近付かれない様に」
「分かった」
「うん」
「行くぞ三、二…一!」
結界が解かれたと同時に三人で集まっていたアンデッド達を蹴散らす、そして間髪入れずにアンデッド達が霧散する中を駆け抜けた。
…剣を振るのに若干力が入ったが仕方のない事だろう。




