167:礎となりし運び手
ダイボラスが骸の山の一部を掴むとこちらへと投げてくる、アリアが焔の壁で焼き払うと同時にセレナが水の弾丸を発射した。
脊髄を束ねたかの様な腕で水の弾丸を弾きながらダイボラスが迫る、すぐさま戦斧を手に走って股の間を抜ける様にしながら足首を斬りつけた。
「ちっ!」
硬い表皮に傷がつく程度だった事に舌打ちしながらも跳躍してダイボラスの背中に闇を纏った剣を突き刺す、今度は表皮を貫いて半ばまで刺さった。
「――――――――ッ!」
ダイボラスが叫び声を上げると剣を刺した周囲が蠢いて複数の骸の腕が伸びてくる、掴まれる寸前に離れるとダイボラスは振り返りながら巨大な拳を振るってきた。
盾を出しながら“風の加護”で後ろに飛びながら拳を受ける、衝撃が盾を通じて伝わるが衝突と同時に左拳に鎖を巻き付けて吹き飛ばされるのを防ぐ。
俺が気を引いてる間にシュリンが幾つか矢を撃つが矢が根を出した瞬間に撃たれた骸が落ちて根が広がるには至らなかった。
鎖を使って着地した俺に向けて右腕が振り下ろされる、だが右腕が振り下ろされる途中でアリアが斬りつけて軌道がズレた右腕を避けながら後退する。
「あれは…」
アリアが斬った左腕に深々と傷が入っているのを確認しながら半月斧を取り出すと風を纏って跳躍すると右腕に斬りつけた。
半月斧の刃は骨の腕は僅かに喰い込む程度で斬る事は出来なかった、すると腕から再び骸達が手を伸ばしてきた。
「苦シイ苦シイ」「暗イ冷タイ」「寒イ寒イ」
苦悶の声を上げながら迫る骸達を払いながらセレナ達のところまで下がるとアリアが斬りつけた箇所も骸が落ちると元の状態に戻っていった。
(扉の彫刻…殉教…俺とアリアの攻撃の違い…)
焔で牽制したアリアも戻ってくる、お互いに気を引き締めながらもダイボラスと再び相対する。
「情報の通りね…頑丈なのに復元力が高い」
「ああ…だが糸口は見えた」
傍に立つアリアに答えながら俺の考えを共有する、俺の考えに三人は頷いた。
「良し、なら俺とアリアで時間を稼ぐ、その間にセレナとシュリンは準備を…上手くいかなかったらアリアの焔装で倒す」
「分かった」
俺達が作戦を決めると同時にダイボラスが叫ぶ、骸達はダイボラスの手引き寄せられて巨大な槌になって手中に収まった。
振り下ろされた槌から衝撃波が巻き起こる、シュリンとセレナの前に立って剣から闇の嵐を放って相殺させた。
アリアは赤熱化した剣で槌を握る手を斬りつける、だが表面を焼き斬る程度だった。
アリアと俺は互いに入れ換わる様にしてダイボラスに攻撃を加えていく、だが闇と焔を纏った剣は核となっている骨にまでは届いてない。
展開を使えば核ごと破壊するのは可能だが先を考えれば無駄遣いはしたくなかった、だかはまずは試してみる。
「ベルク、アリア、離れて!」
セレナの合図に二人同時に離れる、ダイボラスの頭上にはセレナが生み出した特大の水球が浮かんでいた。
水球はセレナが杖を下ろすと破裂してダイボラスを包み込む雨となって降り注ぐ、すると少ししてダイボラスの身体を構成していた骸達が徐々に剥がれていった。
「…―――……―――――ッ」
ダイボラスの動きが鈍くなっていく、骸が剥がれていき骨が見え始めたところでシュリンが矢を引き絞る。
鏃に凄まじい魔力が込められた矢が放たれる、大気を切り裂いて飛ぶ矢はダイボラスの眉間に衝突すると爆発を起こして巨大な頭蓋骨を砕いた。
頭蓋骨を失ったダイボラスは地響きを立てながら倒れると魔石へと姿を変えていった…。