165:洗礼
左側のゴーレムが俺に向けて右腕の剣を振り下ろしてくる、横に避けるとギロチンの如く振り下ろされた刃に乗って伝い走った。
半月斧を手にしながら右腕を伝っているともう一体のゴーレムが剣を突き込んできた。
「“風の加護”」
跳躍して突き込まれた剣の上を転がる様に避けた直後に風を纏って跳ぶ、身体を回転させながら兜を模した頭部に半月斧を叩き込んだ。
叩き込まれた半月斧によって頭部が粉々になったゴーレムは数歩後退するが動きが止まる気配はない、おそらく大破するか核を破壊しなければ止まらないタイプだろう。
背後のゴーレムが左腕の盾を真横に薙ぎ払う、“風跳”真下に跳んで避けると床にぶつかる直前で再び跳んでゴーレムの足元に入ると足首の関節に剣を突き入れた。
そのまま駆け上がって膝裏、付け根と関節の節々に槍や剣を突き入れて胸部の装甲に斬りつけるが相当な硬さと厚さがあるらしく一撃では壊せなかった。
(核があるとすれば此処か…)
両手に弩を持ってゴーレムの肘関節に矢を撃ち込む、そして鎖杭を兜の隙間に打ち込んでゴーレムの胸の上で固定させた。
ゴーレムは俺を振り落とそうとするが各部に打ち込まれた武器が動きを阻害して緩慢なものになっている。
頭を破壊されたゴーレムが剣を俺に向けて勢い良く振るう、鎖を放して避けるとゴーレムの剣は動きを止めたゴーレムの胸部を半ばまで砕いて核を破壊した。
半ばまで剣が埋まった事で引き抜こうと動きを止めたゴーレムに空中で体勢を整えながら槍を構えると穂先に闇を纏わせる。
螺旋を描きながら力が集束していく槍を勢い良く投擲する、槍は破裂した様な音と共にゴーレムの胸部へと一直線に飛んでいった。
槍はゴーレムの分厚い装甲に衝突すると螺旋状の闇が装甲を抉りながら勢いを殺す事なく突き破っていく、螺旋の穂先はゴーレムの内部をかき混ぜ砕きながら核を穿ち、背を貫いて壁へと刺さった。
地面に着地すると同時に二体のゴーレムは轟音を響かせながら崩れ落ちる、やがてその姿も崩れていくと魔石になっていった。
(あっちはどうだ?)
振り向くとスカルジェネラルを真っ二つにするアリアの姿とオリジンキマイラの炎のブレスとゴブリンロードの魔術を防ぐセレナの姿があった。
“風跳”で加速しながらオリジンキマイラに向けて駆ける、一息で傍まで迫った俺に尾の蛇が牙を剥くが逆手に持った小剣で斬り飛ばした。
オリジンキマイラの三首がこちらを向いた瞬間真上から落ちてきた矢が三首の目を正確に貫く、その隙に闇を纏った両手大剣を下から斬り上げる。
「はああっ!!」
闇を纏った刃は山羊と獅子の頭を同時に斬り飛ばし、そのまま両手大剣に力を込めて振り下ろして竜の頭を叩き割る、そして床に当たる寸前に再び斬り上げて胴を半ばから斬り裂いた。
オリジンキマイラの姿が崩れて魔石に変わる向こうでゴブリンロードがこちらに背を向けてる姿が見えたが俺は両手大剣を剣に戻しながらオリジンキマイラの魔石を掴み取る。
ゴブリンロードの足下を急速に成長した蔦が絡め取る、蔦に足を取られ転倒したゴブリンロードの頭を太い樹の矢が床に縫い付ける様に貫いた。
ゴブリンロードが魔石になると天井近くにいたシュリンが降りてきて魔石を回収するとこちらに戻ってきた。
「余計な手出しだったか?」
「ううん、ベルクが力を貸してくれたお陰で早く片付いた」
「そうね、もうちょっと掛かってたかも」
魔石を回収したアリアとセレナともお互いの状態を確認する、怪我や消耗もなく倒す事が出来た様だ。
「これで下層とはな」
「そうね…でもやるしかないわ」
「ああ、先に進もう」
アリアの言葉に頷きながら再び先へと進んだ…。