164:天へ挑んだ塔
ガルマを止めて全員が馬車から降りると目の前にある塔を見上げる、複数の円環に囲われた塔は通常ならば神聖さすら感じさせるだろうが今はどことなく禍々しさを醸し出していた。
「まさかこんな形でこのダンジョンに挑むだなんて思わなかったわ」
「ああ、俺も挑もうとは思っていなかったからな」
“天へ挑んだ塔”は分かっている情報だけでも難易度の高さは相当なものだ、挑むのはそれこそ黄金級か白銀級でも上位の実力者のパーティだけだろう。
「準備は良いか?」
剣を手に全員に問い掛けると三人とも武器を手に頷く、それを確認して再び塔を見上げた。
「行こう」
―――――
荘厳な造りの入口を通ると内部…下層“骸を積み上げた礎”は白で染まっていた。
精緻な装飾が施された柱や様々な古代文字やレリーフが刻まれた床は危険がなければその美しさに感心したかも知れないが壁に無理矢理刻まれた様な妖しく輝く術式がそれを台無しにしていた。
「これが召喚の術式か…」
手にした剣で壁ごと術式を斬る、一瞬だけ断つ事は出来たが壁が蠢く様に修復すると術式も再び繋がって輝きを取り戻した。
「…予想はしてたが術式自体がダンジョンの一部と化しているな」
「ダンジョンに干渉するなんて…本当に何者なのよ」
「分からんが…どちらにせよ核を破壊しなきゃならなくなったと再確認できたな、シュリン」
「…こっち、ついてきて」
シュリンに先導してもらいながら進む、半ばほどまで進んだところでシュリンの耳が震えるとシュリンが弓に矢をつがえながら叫んだ。
「走って!」
シュリンの言葉を聞くと同時に走る、すると左右にあった柱から出てきた巨大な刃がさっきまでいた場所に振り下ろされた。
直後に刃が出た柱が変形していく、装飾が施された柱は複雑に組み変わっていくと柱は鎧騎士の姿を模したゴーレムになった。
それを皮切りに背後からも魔物の気配を感じ取る、見てみると上位種…魔物の中でもロードやジェネラルといった名前が付けられるものが奥から姿を現していた。
「ゴブリンロードにスカルジェネラル…極めつけはオリジンキマイラか」
ゴブリンロードは文字通りゴブリンの上位種で通常とは違い人間を超える巨体により狡猾になった知能と能力を持つ魔物だ、本来ならスカルジェネラルと同じく中規模ダンジョンのボスになっている。
オリジンキマイラはキマイラ種の中でも一番古く強い…獅子に山羊と竜の頭、翼と蛇の尾を持つ魔物で並外れた生命力を有している。
「これが洗礼か」
俺は自分の倍の大きさはあるゴーレム二体の前に出て剣を構える、そしてアリア達に伝えた。
「こっちは俺がなんとかする、後ろは任せた」
「分かった…二人とも行くわよ」
アリア達はゴブリンロード達の方へ向きながら構える、ゴブリンロードが雄叫びを上げると同時に俺はゴーレムに向けて走り出した…。