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163:竜は待ちわびる(ロウドside)


グルシオ大陸の最深部…様々な形状の白い岩が組み合わさった様な塔を囲う様に複数の白い円環が浮かんでいる。


遠目から見れば巨大な天使の像にも見えるそれはその見た目とは裏腹に五十以上にもなる階層と凶悪な罠、グルシオ大陸屈指の強大な魔物達が入った者を容赦なく追い詰める。


小細工など通用しない純粋に挑む者の実力が試され、そして蹴落とされてきた歴史に人々はその塔に刻まれた名前の皮肉さに苦笑いを浮かべた。


“天へ挑んだ塔”、届きもしない頂きを目指した愚か者達が最後に挑むダンジョンだと…。










―――――


「ふむ…」


“天へ挑んだ塔”の最上階…闘技場を思わせる屋上はかつてハイエンドと戦った時の事を鮮明に思い出させた。


座っていた白い玉座から降りる、この玉座が何故あるのかどんな意図でこの場所に置かれているかは分からないが俺からすれば見た目だけのただの椅子でしかない。


屋上の縁に立って見下ろす、最深部にひしめく様々なダンジョンはかつて自分が歩んできた道そのものだった。


「数百年経っても変わらんな」


冒険者は随分と増えていたが質は落ちている、中にはそれなりに強い者もいるが俺の命に届き得る力…レアドロップを手に入れている者はいない。


だからこそ…。


「くく…」


かつて打たれた頬をさする、フィフスが呼ぶ魔神とやらと戦うまではまた退屈な時間を過ごすのだろうと諦めていた時にあの男は俺の前に立った。


高揚を感じたのはいつぶりだろう、打ち込まれる衝撃が芯まで響く感触と迫る刃に意識を研ぎ澄まされる感覚に身を任せるのはいつ以来だったろうか。


かつて生きた時代でもあの強さまで辿り着けた者がどれだけいるだろうか、それほどまでにベルクはこの時代の中でも突出した力を持っていたが再び相対したベルクは以前よりも確固とした意志を宿す瞳と更なる力を手にしていた。


「俺が通った道とは違うが…それはそれで良い」


どうしようもなく退屈な世界だと思っていた、この退屈を消し去れるなら世界がどうなろうと心底どうでも良いという思いは変わらない。


だが数百年後のこの世界にはベルクという自分に届くかも知れない者がいた、運命というものがあるのならばそれは随分と待たせるのが好きな様だ。


「お前も待ち遠しいか、ハイエンド」


白亜の剣から伝わる熱に笑みを浮かべながら呟く、最初に戦ったあの時よりも強くなっているであろうベルクと再び戦えると思うと久しく浮かべていなかった笑みが自然と浮いてきた。


「フィフスの思惑など知った事ではない」


世界の敵となろうが滅ぶ事になるかなどその時に考えれば良い。


己の全てをぶつけれる相手との戦い、今考えるのはそれだけだ…。

次回は2/15から掲載します。

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