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158:遺書


ロウドが去ってすぐに追いついたアリアとセレナにシュリンを任せて工房で作業する。


エルフォードがいない以上、工房を維持するには魔力を供給しなければいけないが探索していると魔石を使って維持できる様に構築されているのが分かったので持っていた魔石で魔力を供給していく。


(まるでこの事態を想定していたかの様だ…ん?)


崩れた砂像の様になったエルフォードの遺体を良く見ると光る物がある、近付いて手に取ると小さな鍵だった。


手にすると鍵は一筋の光を発して工房のある地点を示す、光が示す地点の砂を払ってみると様々な魔術で保護された箱が隠されていた。


鍵を使って箱を開けてみる、箱の中には紐で括られた紙の束と二通の手紙が入っていた。


(手紙の宛名はシュリンと…俺?)


俺の名前が書かれた手紙はごく最近書かれたものらしい、広げて読んでみるとそれは遺書だった。


“ベルク君


これを読んでいるという事は私の命は潰えたのだろう、だから伝えきれなかった事をここに記しておく。


手紙と一緒に入っているのは私がこれまでやってきた研究をまとめたものだ、中には悪用されれば途方もない危険なものもあるので破棄を考えていたが君に託す事にする。


そしてシュリンの事をよろしく頼む、あの子はエルフだが年は君とそう変わらない…一生とは言えないが一人になっても生きていけるくらい強くなるまで力になってやって欲しい。


最後に謝らせて欲しい、私が果たすべきだった責任を君達に押し付ける事になってすまない。


それでもどうかロウドを止めて欲しい、そんな思いはなかったとしてもロウドのおかげで守られたものをロウドが壊すのを防いで欲しい。


無責任な私に祈る資格はないのかも知れないが、せめて苦難を越えた君達の未来に幸多からん事を…。”


「責任を押し付ける…か」


手紙を読み終えて呟く、手紙からは話しただけでは分からなかったエルフォードの人となりが伝わってきた。


「無責任なんかじゃない…」


エルフォードはロウドを封印して世界を数百年守り続けた、そして未来を守る為に残る力全てを使って最期の最後まで抗い続けた。


自分の命を最後の一片まで誰かの為に燃やし続けた…。


「アンタは責任を充分過ぎるくらい果たしてくれたよ…だからもう肩の荷を降ろしてくれ」


手紙を手にしたまま敬礼する、託されたものの重さを改めて感じるが…もう押し潰されて放り投げる様な事はしない。


「これから先は、俺達が背負っていく…」


それが偉大なる魔法使いに出来る唯一の弔いだろうから…。

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