154:黒嵐の剣
「キュルル…ギギギ!!」
ガーディアンが歯車が軋む様な叫びと涎を散らしながら四本の鎌が襲い掛かる。
足元に迫った鎌を避けて登るとすかさず左右から鎌が襲い掛かり、跳躍して避けると最後の鎌が真正面から迫った。
剣で受けるが再び弾き飛ばされる、更に銃が凄まじい音を放ちながら火を吹く。
即座に杭を備えた塔型大盾で受けるがその間にジャガーノートは更に進んでいる。
(…一定の距離を取ると攻撃が止まるな)
おそらくあの鎌の届く範囲に入った者を攻撃する様に造られているのだろう、ジャガーノートが前進した事で再び距離が開くとぱたりと攻撃が止んだ。
排出口を確認すると数体のメタルリザードマンが巨大戦斧を外そうとしていた、急がなければまた奴等に囲まれるだろう。
「仕方ないな…」
これ以上時間を掛ける訳にはいかない、王国にいた時から密かに鍛練を重ねてはいたがぶっつけ本番でやるしかないだろう。
剣に手を添えると全身に纏っている焔の様な闇を剣へと集束させていく、闇はやがて渦巻き、竜巻の如き黒嵐を纏った剣を構えてガーディアンを見据える。
…“蝕”を発現させてからずっと考えていた。
俺は体外に出せる魔力が少ない故に外へ放出する攻撃魔術の威力が普通より弱い、だから攻撃魔術を諦めて付与や強化に特化させてきた。
だけどアリアとルスクディーテを見ていて思い至った、魔術の代わりに本来無形であるカオスクルセイダーの闇を使う事は出来ないかと…。
アリアに教わり、そして試行錯誤の末に編み出した技…名付けるならば。
「“黒刃嵐舞”!」
剣を振るうと剣身に纏った闇がガーディアンに向けて放たれる、ガーディアンは四本の鎌を振るうが闇の嵐は鎌を弾きながら吹き荒れて衝突した。
闇は風と幾千もの刃と化してガーディアンを押さえつける、そして俺とガーディアン間に黒嵐のトンネルが生み出された。
脚とマントから闇を噴き出して飛び込む、黒嵐は俺を加速させながら再び剣に集まっていった。
黒嵐を纏った剣をガーディアンの胴に真一文字で叩き込む、剣はジャガーノートの前足ごとガーディアンを斬り裂いた。
「ギガアァァァァァァッ!!?」
剣を振り抜いた体勢で着地する、ガーディアンは断末魔を上げて爆発するとバランスを崩したジャガーノートは躓く様に動きを止めた。
―――――
ジャガーノートから少し離れた地点…。
セレナが展開する結界の中で琥珀の瞳でジャガーノートを見据えるシュリンがいた。
「見つけた」
そう呟くと弓を構える、そして結界を維持しながら周囲を警戒しているセレナに告げた。
「私が展開したら結界を解除して」
「分かりました」
言葉少なながらも息を合わせてくれるセレナに感心しながらも弓を構えると力ある言葉を口にする。
「緑装展開“豊穣の颶風”」
全身を緑の風が覆った…。