153:犠牲を強いる者
「ふっ!」
「はあっ!」
飛び掛かってきたメタルリザードマン達を迎撃する。
アリアは高熱を宿した刃で群がるメタルリザードマンを灼き斬り、俺はガルマを還すと巨大剣を真一文字に振るって蹴散らした。
だがすぐさま後続が襲い掛かり、その間にもジャガーノートから更に奴等が排出されていく。
そしてそのまま前進するジャガーノートの頭部にも魔力が流れていくのを感じ取って舌打ちするがすぐさま巨大剣を投擲してアリアと奴等の間を空ける。
「アリア!足とこいつらは俺がやるから頭を潰せ!」
「分かった!」
翼を広げたアリアがジャガーノートの頭部に向けて飛翔する、メタルリザードマンが腕の爪をアリアに向けて射出しようとするが“蝕”を発動すると同時に闇を纏ったマントを広げながらコマの様に回転する。
マントから数百もの矢が全方位に放たれてメタルリザードマン達に突き刺さる、そして回転したまま手に巨大戦斧を持つと勢いのまま排出口へと投擲した。
巨大戦斧の刃は排出口に衝突して突き刺さる、これで少しの間は新たなメタルリザードマンが出る事はない。
「後は…」
背後から迫る気配に転がる様に避けて振り返ると四本腕のリザードマン…ガーディアンとでも言うべき者が奇声を上げて鎌を打ち鳴らした。
小剣と手斧を持って距離を詰める、だがガーディアンは凄まじい速さで鎌を振るって迎撃してきた。
振るわれる鎌の威力は小剣と手斧では受けきれないと判断して長剣に持ち変える、高速で迫る鎌を受け流し、弾きながら辿り着こうとするが的確に死角を突きながら続けざまに振るわれる鎌がそれを阻む。
鎌を剣で受け止めるとガーディアンの胸部が開いて何かが射出される、直後に強い衝撃に襲われてふき飛ばされた。
「…まさか、銃か?」
胸甲に当たったのは金属の弾だった、銃とは火薬を使って弾を撃ち出す武器だが製造コストや整備の点から流行らなかった代物だ。
だがガーディアンが備えてるのは以前見たものとは比べ物にならない威力と精度を有している、それに縦横無尽に振るわれる鎌もまともに受けれる威力ではない。
「犠牲を強いる者、か…」
かつて見た古代の神々の名にあったがその名に恥じない強さだ…。
―――――
(アリアside)
ジャガーノートが魔力を溜めながら顎を開く、再び岩山を狙って破壊の光が放たれようとするが…。
下から紅蓮の流星が顎に衝突して無理矢理上へと頭を仰け反らした事で光は真っ直ぐと空に放たれた。
「…かったいわね!このガラクタ!」
焔を纏ったアリアが愚痴を吐きながらも剣を構える、すると焔が剣へと集束していき宿る熱で刃が白くなっていく。
「“極焔白刃”!」
急降下しながらこちらに口を向けたジャガーノートの頭に白刃を振り下ろす、一瞬の交差だがジャガーノートが動きを止めた直後に白刃を振り下ろした箇所から線が入っていき爆発を起こした。
「良し!」
爆発して頭部が粉々になった姿に拳を握る、だがその喜びも長くは続かなかった。
首から液体の様なものが溢れる、それはまるで逆再生するかの様に形を成していき輪郭を作り上げていく。
そして朽ちかけていた装甲こそないものの復元した頭に無機質な光が再び灯った。
「…再生機能まであるの?」
「冗談は存在だけにしてほしいのう…」
アリアの呟きにルスクディーテが呆れ気味に応じた…。