152:人造竜
「戦略級って事は…アレ自体が抑止力になるほどの力を秘めてる訳か」
確かに森とは言えダンジョンを焼き払うあの光は並の竜とは比べ物にならない威力だ、あの巨躯には生半可な攻撃も見た目通り通用しないだろう。
ジャガーノートは再びこちらに向けて口を開けると喉奥が明滅し始めた。
「あの光をまた撃つ気か！」
ただでさえ威力が高いのに短い間隔で撃てるなど規格外過ぎる。
全員に散らばる様に言おうとする前にセレナが前に出た。
「涙装展開“真実を見る涙天使”！」
展開したセレナが杖を前に掲げると周囲の水が前方に集まって円形の盾を形作っていく、そして詠唱と共に巨大な水盾が完成した。
「“真なる破魔の水鏡”！」
ジャガーノートが光のブレスを撃つ、ブレスはやや斜めに展開された水盾に凄まじい光を撒き散らし音を轟かせながら衝突すると上へと逸れて空へと昇っていった。
「セレナ！」
「大丈夫です、ただ…そう何発も防ぐ事は出来ないですね」
「いや、充分だ」
剣を抜きながらアリアに目配せする、アリアが頷くとシュリンに向き直った。
「アレに使える有効打はあるか？」
「…時間さえ貰えれば」
「なら俺とアリアで奴を止める、セレナはシュリンが集中できる様に守ってくれ」
そう告げて岩山を跳び降りる、焼き払われた木々の先にいるジャガーノートを見据えながら力ある言葉を口にする。
「軍装展開“黒纏う聖軍”！」
「焔装展開“情欲の麗焔”！」
鎧を纏うと同時にガルマを召喚して駆ける、アリアも隣に並ぶ様に飛翔しながらジャガーノートへと向かった。
ジャガーノートの眼が俺達に向くと口から幾つもの光の矢が雨の様に放たれる、俺とアリアは左右に分かれてアリアは燕の様に矢を掻い潜り、俺はガルマを縦横無尽に駆けさせて闇を纏った剣で矢を弾く。
矢の雨を掻い潜って俺は巨大剣に持ち変えるとアリアと同時にジャガーノートの前足を斬りつける。
「――――――――――ッ！！！」
内部が剥き出しになった前足から火花が散る、ジャガーノートが咆哮を上げると胴体から幾つもの穴が開いて何かを排出した。
排出されたのは楕円形の卵に見えた、だが大きさが俺と同じくらいある上にそれが続けて何個も落ちてくる。
(爆弾か？)
地面に落ちてきたそれらを避けると表面に線が入り金属が擦れ合う音と重なる音を響かせながら変形していった。
「カカカカカッ」
「ギギギギギギッ」
「キュルルルルッ」
メタルリザードマンとでも言うべき姿に変形した者達が無機質な眼で俺達を捉える、そして両腕から鋭い爪が伸びて打ち鳴らした。
更に前足の一部が変形して上半身だけの四本の蟷螂の腕を備えたリザードマンが現れる、前足についたままのそれは他よりも強いようだ。
「戦略級…防衛機能も備えていて当然か」
俺とアリアをメタルリザードマン達が取り囲んだ…。
