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15:情欲の火口


“情欲の火口”は火山がダンジョンと化したものだ、内部から火口に向けて登っていく構造になっており、登っていくにつれて出現する魔物が強くなり環境が厳しくなっていく。


それでもこのダンジョンで手に入る宝石の美しさに魅入られて冒険者達は奥へ奥へと誘われる、まるで情熱に浮かされた若者の様に…。






―――――


第一フロア“再会を願った道”を汗を拭いながら進んでいくが…。


「あっつい…」


アリアが胸元を扇ぎながら呟く、今は重要な箇所だけを守る軽鎧を着ていてもダンジョンの熱気は辛いものだった。


「入ったばかりだがこの熱気は確かにキツいな…使うか?」


「そうね…出し惜しんで倒れたら元も子もないし」


鞄から魔道具を取り出して握り込む、魔力を流し込むと二人の体を包む様に冷たい空気が覆った。


「実際に使うと本当に凄い、魔道具職人にもなれるんじゃない?」


「魔石に術式を刻めるだけだ、それ以上は習得する時間がなかった」


「それだけでも充分凄いんだけど…」


今使ったのは俺が魔石を用いて作った使い捨ての魔道具だ、職人が作った魔道具ならば半永久的に使えるより効果があるのが作れるが俺の腕では使い捨てな上に戦闘に使えるレベルのは作れなかった。


「多めに作ってきたが足りるか分からない、なるべく急ごう」


「そうね、それの試運転もある訳だしね」


アリアが俺の腰に差している武器を見ながら言う、それに頷きながら進んでいると複数のサラマンダーとファイアエレメンタルが道を塞いだ。


「…サラマンダーは任せていいか」


「ええ、すぐに終わらせるわ」


互いに武器を抜いて駆け出す、漆黒の小剣と手斧を手に三体のファイアエレメンタルへ向かうと牽制とばかりに火球を放ってきた。


火球を斬り払って宙に浮かぶ一体に手斧を肩に叩き込んで地面に落とす、地面に落ちたエレメンタルの頭に小剣を突き立てると体が霧散して魔石に変わっていく。


二体のエレメンタルが挟み込む様にして炎を放ってくる、転がる様にして避けながら向き直ると再び挟み撃ちで迫ってきた。


(片方をなんとか…)


武器を握り直した瞬間、再び頭の中に声が流れてくる、一瞬の事ではあったがすぐさま行動に移す。


放たれる炎を掻い潜りながらエレメンタル達の間に入り込む、そして手斧と小剣の柄頭を合わせると一瞬でひとつの斧槍(ハルバード)となって手に収まった。


その場で一回転する様に斧槍を振るう、エレメンタル達は黒い風と化した刃によって斬り裂かれて霧散すると魔石となって転がった。


アリアの方に目を向けると彼女もサラマンダーを倒し終えていた、魔石を回収して向かうと手を振って向かってきた。


「凄いわね、形状を自在に変えられる能力なんて初めて見たわ」


「というよりは…いやまだ確証がないな」


念じると斧槍から手斧と小剣に戻る、他にも変化させる事が出来そうだがそれはこれから試していくとしよう。


「知ってはいたが良い腕をしているな」


「剣一本だけ持ってここまで来たからね、これでも勝てなかったのあの魔物くらいなのよ」


「そうか、次は合わせてみるか?」


「そうね、付け焼き刃でも連携がどれぐらい出来るか試したいし」


相談しながらも奥へと進んでいく、そうして互いの力量を確認しながら最奥にいるであろう存在に向かって…。

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