132:魔大陸へ
「どおりでこっちで動きが掴めない訳ね」
手紙の内容をアリア達に伝えると表情を厳しくしてアリアが呟く、するとフィリアが部屋の隅に積み上げられた荷物を漁り始めた。
「確かここら辺に…あったあったー」
フィリアが手にしたのは刻印が施された水晶だった、それに魔力を込めると輝き始めて光が輪郭を作っていく。
“…フィリアか、どうした?”
「…あの魔道具か」
光はヴィクトリアの顔を形作ると声が響いてくる、以前帝国で見たものだがかなり距離がある王国からも使えるとは思ってなかった。
「そうそう、あれにあの兜に使われてた技術を応用して改良した物ですー」
「技術?」
「全部は解析できませんでしたがー、ひとまず兜の魔力で装着者に影響を与える機能の一部を引っ張り出して魔力の信号を発信して既存の魔道具を中継させる機能を加えて距離を克服しましたー」
遠くなるにつれてノイズは大きくなりますがーとつけ加えるが俺達は驚愕していた。
「…それって」
「…使い方次第では魔道具を暴走させたり停止させたりできるだろうね」
“…ベルクとアリア達もいるという事は火急の用件か?”
兄貴も思わず唾を飲んでしまうほどの技術にフィリアが如何に魔道具の作成に置いて天才かを見せつけられるがヴィクトリアの声で我に返り状況を説明する。
ヴィクトリアは少しだけ沈黙すると顔を上げて俺を見た。
“あまりにもあからさま過ぎる気がするが他に手がかりがないのも事実、下手に考え動かずにいるより行動に起こした方が良いと我は考えるがどうだ?”
「同感です、それに今回はベルクの立場を活用すればクラングルズでもある程度の融通を効かせられるでしょう」
“これも一重にそれほどの評価を与えられたベルクのお陰よな、グランクルズと手を取り合えるかも知れん機会が来るとはな”
「…ひとまず俺達は魔大陸へ向かうという事で良いでしょうか?」
なんとなくむず痒い雰囲気になりそうだったので話をなんとか逸らすと兄貴とヴィクトリアは頷いた。
“だが全員で行く訳には行くまい、未だ奴等の手の者がどれだけいるかは未知数だ…我は当然としてバドルやフィリアも向かわせる訳には行かぬだろう”
「すまないが俺も行けない、まだ国内が安定してるとは言い難いしバドル様とフィリア様の護衛もある」
ヴィクトリアに続く様にラクルも理由を語る、確かに未だフィフスの手がなくなった確信はないし今回の事を考えると兄貴以外に任せられるラクルには残って欲しい。
「ひとまず俺、アリア、セレナで向かう、その後は状況を逐一報告して必要になったら援軍を出してもらうという形はどうだ?」
俺の案に全員が同意し、すぐさま魔大陸へと向かう為に早々に準備を済まして俺達は港町までガルマを走らせた…。