131:魔大陸からの知らせ
「流石に自重した方が良いと思うよセルク」
翌日、俺は床の上で正座をして兄貴の苦言を大人しく聞いていた。
「ベルガ王国は属国になったとは言え権勢を強めたいという貴族がいなくなった訳じゃないからね、もしセルクが好色だなんて噂が立てば自分の娘を側室になんてやってくるのが居ても不思議じゃないよ?」
「はい…」
「今は帝国の人達だけだからまだセルクの身分的にはなんとかなるだろうけど…これからセルクに対してのアプローチは増えるだろうから気をつけた方が良いよ」
「アプローチ?」
「セルクはこの国…いやこの大陸で立てた実績と持つ力で並ぶ者はそうはいないからね、その力にあやかろうとする者は後を絶たないと思うよ」
「はあ…」
我が事ながらため息が出る、王国にいた時は悪評と婚約者がいた事で言い寄られる事はなかったがこれからはそういう事があると思うだけで憂鬱になってしまった。
そんな事を考えているとドアがノックされる、立ち上がって用件を確認すると侍従が俺宛に手紙が届いたので渡しに来たらしい。
手紙を受け取ると差出人はグルシオ大陸の冒険者ギルド…ウォークリアのギルドマスターからだった。
伝書魔術も流石に海を渡る事は出来ないので大陸を渡っての手紙はそれなりに費用と手間が掛かる、それでも出したという事はそれだけ重要な知らせという事だ。
「これは…」
封蝋を割って中に目を通す、そこに書いてあった事に思わず疑ってしまうがあのギルドマスターが質の悪い冗談をする人じゃないというのは良く知っている。
「どうしたんだい?」
ただならぬ気配を察したのか問い掛けてきた兄貴に手紙を渡す、手紙には要約するとこう書かれていた。
“ベルク君、君の活躍はグルシオ大陸でも耳に届く程に知れ渡っているよ。
私は君が白銀に相応しいと言ったがそれはとんだ過小評価だった様だ
今回手紙をしたためたのはレアドロップに関係する事でね。
君から提供してもらった情報を元に今一度中規模以上のダンジョンを調査し直す事になったのだが魔大陸最深部の調査に向かった黄金級冒険者が消息を絶ってしまった。
更に最深部の辺りで出現しない筈のシャドウストーカーが確認されたりなどの事が起きており君が以前知らせてくれたレアドロップを狙う者達が関わっているのではないかと考えた。
相応の立場となった君に冒険者として依頼するのは心苦しいがどうか力を貸してもらえないだろうか?”
「セルク、まさか…」
「ああ、アリアが焼き殺した筈だが奴にしては簡単に死んだと思っていたんだ」
それに最深部で消息を絶ったという黄金級冒険者…黄金級はグルシオ大陸でも片手で数えるしかいない程の実力者だ、最深部であろうと引き際を間違える様な人達はいないしトラブルが起きたとしても対応できる筈だ。
考えられるとするならば…。
「ロウド…」
対処できない程の不運に襲われたという事だ。