130:理由
「説明するとですねー、カオスクルセイダーの属性は闇なのは分かるんですがそもそも闇自体があまり研究されてないんですー」
「研究されてない?」
「はいー、これは私よりバドルさんの方がお詳しいかとー」
フィリアがそうして兄貴に引き継ぐと資料を確認していた兄貴は頷きながら説明してくれた。
「魔術には地水火風の基本四属性に光と闇の二大属性を総じて六大属性と呼ばれるのだけど…実は二大属性は基本四属性と比べて研究が進んでないんだ」
兄貴はそう言うと白紙を一枚取ってそこに簡略化した属性の相関図を書いていきながら説明を続けた。
「魔術を成す根幹は魔力と私達の想像力…即ち起こす現象をどれだけ理解し明確にイメージできるかが重要になってくる。
詠唱はこのイメージの補助をするのと原理は分かっていなくてもこれを唱えればこの魔術が発動するっていう固定観念を生み出す為のものだね」
兄貴は魔術式を書きながら説明をしていく、気付けばその場にいた全員が兄貴の説明を聞いていた。
「二大属性、とりわけ闇が研究されてないのはこの現象が理解できないのと明確なイメージが持てないのが原因なんだ。
光は物理現象として認識しやすいけどそれでも二大属性は人間の精神性…魂や心といったものを司る領域の認識は個々で差がありすぎるから研究が進んでないんだ」
「…カオスクルセイダーはその最たるものって訳か」
「そうだね、何より闇や魂の研究は昔から良いイメージが持たれていなかったり禁術として忌み嫌われたりしていた過去があるからね」
「はいー、そういう訳でベルク君のカオスクルセイダーは研究してみない事には魔術師の観点からアドバイスできなくてー、戦士としての観点からもこの場で一番強いのはベルク君なのでー、戦士としてのアドバイスもできないんですー」
兄貴とフィリアの説明に納得しながらも肩を落としそうになるが堪えてどうするかを考えた。
「…ひとまず俺は状況が動くまで三人の相手をした方が良いか」
「そうですねー、三人の鍛練相手や見本としてはベルク君が一番向いてますので是非お願いしますー」
その方がデータ取れますしーと言いながらいそいそと準備を始めるフィリアに思わずため息をつきながらもその日は日が暮れるまで模擬戦を行った。
その夜はフィリアも加わって四人抱く事になり流石に疲れた、兄貴にはバレた。