125:久しぶり
鎧を纏うと同時に駆け出して両手大剣を振り下ろすが斬馬刀で受けられる。
並の武器なら武器ごと叩き斬る威力を伴った両手大剣をラクルは揺るぐ事なく受け止めると斬馬刀で弾き上げながら迫る。
「“風の加護”」
斬馬刀が振り下ろされる寸前に風を纏うと真横に跳んで避けながら半月斧を手にして薙ぎ払う。
「くっ!」
ラクルは半月斧を背中で受けて揺らぎながらも斬馬刀を下から斬り上げてくる、長大な刀身は俺の胸甲を捉えて火花を散らした。
後ろに下がりながらも踏ん張って両腕に闇を纏いながら巨大剣を手に取る、巨大剣と斬馬刀が唸りを上げてぶつかるとその衝撃音が風を伴って周囲に轟いた。
「…久しぶりだな、こうして戦うのは」
「ああ、二年ぶりの勝負をしよう」
鍔迫り合いながら互いに兜の下で笑みを浮かべると同時に下がって武器を振るう。
巨大剣の薙ぎ払いをラクルは斬馬刀で滑らせる様に受け流すと同時に踏み込んでくるが俺は勢いを乗せたまま回転すると同時に大鎌へと変えて振るう。
ラクルは咄嗟に斬馬刀を地面に突き立て盾にする事で大鎌を防ごうとするがその直前に鎖に変えると鎖は勢い良くラクルに巻き付いた。
「何!?」
動きを止めたラクルの鳩尾に風を纏った拳を打ち込む、だが鎧の凄まじい堅さと重さが拳を通して伝わってきた。
(咄嗟に強化したか、だが)
纏った風が拳を震わして衝撃を伝える、だがラクルは鎖を引き剥がして裏拳を放ってきた。
後ろへと跳びながら剣を手にするとラクルは斬馬刀で袈裟斬りを放ってくる、脚に風を集めて跳躍して避けると斬馬刀は地面に跳ね返る様に切り返されて迫った。
すぐさま盾を出して斬馬刀を受ける、衝撃でふき飛ばされながらも弩を撃って牽制する事で追撃を防ぐ。
(そういう事か…)
再び距離が空いた事で息を整えながらあの切り返し…ひいてはあの巨大な斬馬刀を軽々と振るえる理由を考察する。
ザンマの能力は重さの増減だと言っていた、おそらく振るっている間は軽くして当たる瞬間に一気に重くしているのだろう。
言葉にするのは簡単だが実際に行うには戦いの中の一瞬の内に当たるかどうかを見極める判断力や洞察力が必要になる。
(あの人の戦い方から学んだのか)
この僅かな期間でこれだけ使いこなせるのはラクル自身の才能と努力がザンマと噛み合ったからこそだろう、もしかするとあの人はそう思ったからこそザンマをラクルに託したのかも知れない。
(強いな…だが負けてはやらない)
学園では負け続きだった、それにラクルは確かに強いが粗い、だからより強くなってもらう為にも今回は俺が勝たせてもらう。
「“蝕”」
自らの中にある枷を放つ言葉が響くと同時に闇が全身を包みこむ。
「行くぞ、ラクル!」
「ああ!」
漆黒をはためかせながら再び駆け出した…。