118:後始末と星達のお茶会(アリアside)
フィフス達を倒し、公爵邸の魔物達を掃討した俺達は地下牢に放り込まれていたブレイジア公爵を救出した。
放り込まれてからずっと放置されていたのかかなり衰弱していたがセレナの処置のお陰で一命は取り留めた。
魔物達は目に見えて統率を失っており、ルミナスから報告を受けて国境で魔物達と戦っていた帝国軍と俺の伝書を受けて来た兄貴が率いる王国軍と合流して公爵領とオルシロン伯爵領の掃討に向かった。
だがオルシロン伯爵領は公爵領以上に荒れ果てており、当主のオルシロン伯爵とその一家だったと思われるものは無惨な姿で発見された。
王国を襲った今回の厄災は後に“悪魔の囁き”と呼ばれる様になり、その傷跡はあまりにも大きなものとなった…。
―――――
(アリアside)
一ヶ月後…。
「…なんというか激動の日々だったわね」
私は紅茶を一口飲みながらそう呟く、魔物達の掃討も一段落着いた王国は帝国への救援を再び依頼した。
最も大きな領地である公爵領の甚大な被害に加えてフィフス達に唆された者達(セルクを追い詰めた大半)のほとんどは死亡してしまった。
貴族の半数近くがいなくなった事で国王は帝国への実質的な属国になるのと引き換えに救援を依頼、それに対してヴィクトリア姉さんは状況が落ち着いたら国王の退位と王位をエルネリス王女…バドルお義兄さんの奥さんに継がせるのを条件に了承した。
彼女が王位を継げばその夫であるお義兄さんの王国での権力は絶大なものになるだろう、それに二人の子供が王となればベルクを介して帝国とも血の繋がりが生まれる。
要は王国はベルクとお義兄さんによって国としての形を保つのを許された状態となったのだった…今はようやく魔物の掃討が一段落ついて各所の立て直しを始めており、安定した状況になってきている。
「ベルクはどれくらいで帰ってくるでしょうか?」
「長くて二日くらいかしら?此処からならガルマで半日も掛からないでしょうし」
ベルクはお義兄さんと一緒に侯爵領に向かっている、墓参りと色々と片付けなければならない事があるという事からなんとなくまだ触れない方が良い気がしてこっちで待つ事にした。
それに…。
「…お茶、冷めちゃうわよ?」
卓の向かいに座る令嬢…テレジアに声を掛ける、ここに残ったのは彼女の監視も兼ねて話しておきたかったからだ。
「…準備して頂きながら失礼なのですが、私が一緒に居てもよろしいのでしょうか?」
「大丈夫よ、私達は名目上貴方の監視役になってるけどそれは口実だもの」
「口実、ですか」
「そう、私達は貴方に聞きたい事があるし貴方だって私に聞きたい事があるんじゃない?ベルクの事とかでね」
私の言葉にテレジアは反応する、私とセレナはカップを置いて話す姿勢に入った。
「貴方、まだベルクへの想いがあるんじゃない?」
「っ!?…それは」
「だから聞いておきたいの、貴方はこれからどうするのか…それ次第で私達のする事が変わるから」
もしもテレジアがベルクの女の一人に加わるなら立ち位置や役割を考えなければならない、後からこうなったと言われてあたふたするよりはこうして事前に話しておきたかった。
テレジアは俯いてしばらく沈黙していたけど意を決したのか顔を上げて答えた。
「私は彼の下にいくつもりはありません、はっきりと別れを告げられましたから」
そうしてテレジアは静かにその時の事を語り出した…。