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115:憤怒の蟲


「馬鹿…な」


フィフスは影を使って剣を引き抜きながら立ち上がる、剣を握り直して斬り掛かろうとしたが…。


頭上から槍を振りかぶったバグラスが迫る、かわしてバグラスに向けて剣を振るうと槍で受けて俺とフィフスの間に立ちはだかった。


「耐えれる筈がない…あの闇は貴方の心の傷を暴き闇を増幅させるもの!どれだけ強靭であろうと人間が耐えれるものではない!」


「…お前は何も分かっていない」


自身の胸に手を当てながら答える、この胸にある暖かさを感じながら続けた。


「お前の言う通り俺の心には闇がある、だが光が消せた訳じゃない…そして光が俺を照らしてくれている限り、どれだけ深い闇であろうと俺が呑まれる事はない!」


歯を食い縛るフィフス達に剣を突きつける、だが俺の言葉を聞いて最も怒りを露にしたのは…。


「光がある限り呑まれる事はないだと…綺麗事を抜かすな黒嵐騎士!」


禍々しい魔力を放出しながらバグラスが叫ぶ、全身が音を立てて変形していくとかろうじて人の形を保っていた姿はよりおぞましいものへとなっていった。


「そんな脆弱な闇など、貴様ごと喰らってやる!」


幾つもの羽根を生やしたバグラスが音を置き去りにする速さで突撃してくる、剣を盾に受けるがバグラスは俺を掴んで勢いのまま空へと上昇する。


館が手の平くらいの小ささまでなったところでバグラスは俺を放り投げる、風魔術で宙を蹴りながら向かい合うとバグラスは憎悪に滾らせた眼で俺を捉えた。


「ここで貴様を殺して燃え尽きる愚かな星に変えてやる!」


バグラスの叫びと蟲達の鳴き声が空に響き渡った…。








―――――


「ちっ…」


傷が塞がったフィフスは舌打ちと共に空を見上げる、自身の予想を軽々と超えてきたベルクに苛立つが切り換えて現在の最善手を選ぶ。


(バグラスでは奴に勝てないでしょうな、アレはあの男と同じタイプだ)


魔獣達はまだ数はいるが決め手に欠ける、エボルを飲んでから既に三十分以上過ぎてるこの体でこれ以上の益を得る事は出来ないだろう。


(なら、とっととお暇しましょうか)


そうして影に潜ろうとした瞬間…。


「焔装展開」


凛とした声が響き。


「“情欲の麗焔(ルスクディーテ)”」


フィフスを中心に火柱が立った。


「っ!?」


突然起こった火柱に包まれたフィフスは虚を突かれる、焔は荒れ狂って肌を焼き容赦なく身を焦がしていく。


「逃がす訳がないでしょ」


火柱の傍に赤い鳳を思わせるドレスと鎧を合わせた装束に身を纏ったアリアが降り立つとフィフスへと目を向ける。


「エボルだかなんだか知らないけど再生するならそれすら追いつかせず焼き尽くすだけよ」


「…!」


「それでも死なないなら薬の効果が切れるまで…灰になるまで燃やし続けてあげる」


アリアはそう言って背を向ける、燃え盛る焔の中に影など存在しない以上フィフスに残されているのは灰となる事だけだった。


「奪った命の数だけ苦しんで死になさい」


アリアの静かな怒りに応える様に焔はフィフスを骨の髄まで焼き尽くした…。

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