104:侮辱(ガンザside)
地面を転がりながら着地したフィフスにガンザが斬馬刀を振り下ろす。
だがフィフスとガンザの間に割って入る様にシャドウストーカーが現れて身代わりになる。
その間に距離を取ったフィフスは首を傾げながらガンザを見る、そして思い出したとでも言う様に指を立てた。
「ああ…その剣はヒヅチで回収し損ねたものですね、わざわざ届けに来てくれた…という訳ではありませんか」
「ようやく見つけたぞ…カムツヒを奪い我が一族、我が義娘、我が息子を殺した罪!千度その身を斬り刻んでも飽き足らぬ!!」
「一族…あの里にいた者は等しく殺した筈なのですがねえ?万が一にも生き残らない様に毒まで蒔いたというのに」
「貴様ァ!!」
ガンザが斬馬刀を振るうと斬撃が巻き起こる、再びシャドウストーカー達が盾となって防ぐとガンザの周囲にもシャドウストーカーが現れた。
「はあっ!!」
ガンザに迫ろうとしていたシャドウストーカー達をラクルが斬り払う、そのまま剣を構えながら力強く告げた。
「他のは俺が相手します!ガンザさんは奴を!」
「かたじけない!」
ガンザは巨体からは想像もつかない速さで距離を詰めて斬馬刀を振り下ろす、フィフスは杖で受け流しながら再び下がるがガンザはそれを許さずに縦横無尽の連撃で攻め立てる。
フィフスは下がるのをやめて杖で力が乗る寸前の斬馬刀を止める、そして足下の影から幾つもの影の刃がガンザを襲うが鎧によって傷一つなく防がれた。
「一族を殺された復讐、ですかな?人は本当にそういうのが好きですねえ」
「仇討ちだけではない…これ以上我の様な思いをする者が現れぬ様に、貴様によって失われかもしれない未来を守る為にも!我は今ここで貴様を討たねばならん!!」
「その毒でボロボロの体でですか?…笑わせるなよ死に損ない」
フィフスの足下から現れたシャドウストーカーが形を崩してフィフスの腕と杖へと纏わりつく、そして影の刃で一瞬だけ動きを止めていたガンザの胸甲を交差する様に振り抜いた。
「ぐぬっ!?」
予想以上の威力と衝撃でガンザの体が揺らぐ、フィフスは更にシャドウストーカーを吸収した杖で突くと杖から吹き出した影の波動がガンザをふき飛ばした。
「たかだが死ぬのが早くなった程度の事で喧しく騒ぎおって…いずれ訪れる終わりで騒ぐ貴様等の蒙昧さには呆れるばかりだ」
フィフスはそう言いながらシャドウストーカーを吸収…否、喰らっていく。
「そんなに死にたければ死なせてやろう、あの最後まで無駄に足掻いた貴様の一族とやらの様にな」
影の怪物と化したフィフスがおぞましい形相でそう告げた…。