101:潜入
ラクル達と合流してから数日…俺達は公爵本邸がある街へと到着した…が。
「魔物だらけだな…」
少し離れた場所から魔術で偵察した街には多種多様な魔物達が徘徊していた、その中には異形の武具を身に纏う者達もいた。
「武器を持ってる者も奴等の仲間…なんだな」
「利用されてるだけなんだろうが、あそこにいるのは奴等の意志だ」
魔物になったのと違って武具を具現化した者は知性や意志を失くした訳ではない、誘導されたにしろ唆されたにしろ奴等側にいるのは自分の判断だ。
「だとしてもどうするの?あの街にいる全部を相手にするには不確定要素が多すぎるわ」
「…街も堅固な造りだ、我等ならば真正面からもいけるだろうが得策とは言えまい」
「…少し待ってくれ」
街の構造を簡潔に地面に描くとそれに触れながら剣を握る、しばらくして目を開けると立ち上がった。
「ついてきてくれ」
そう言って街の外周を歩いてとある地点に着くと魔石に魔力を流して地面に投げる、すると魔石はガラスが割れる様な音を立てて砕けた。
「…ここじゃないか」
別の地点へと移動して同じ事を行う、そして三度目の場所で俺は剣を地面に突き立てて横に倒す様に傾けた。
「これって…」
「隠し通路…か、知っていたのか?」
「…王国を出る時に抜け道を使った事がある、王都にあるんなら公爵本邸にもあるんじゃないかと思ってな」
「…知らなかったのならどうやって見つけたんですか?」
「カオスクルセイダーの中にそういうのが得意なのもいてな、その経験と照らし合わせて目星をつけたら後は探すだけだ」
「…魔石を使った反響探知って結構難しい筈なんだけど」
「ダンジョンの調査には必要だったからな」
行こうと言って隠し通路に飛び込む、“照光”の術式を刻んだ魔石で照らしながら進んでいった。
「…アリアも反響探知が出来るの?」
「形だけならね、私はこの通路なら何回かやって空洞があるかもって精度よ」
アリアは肩を竦めながら後に続く、セレナも些か苦笑いしながらついていった。
「…ラクル、反響探知とはそれほど難しい術なのか?」
「そうですね、ベルクのレベルなら騎士団で専門の斥候になれるでしょう」
「…むしろ彼は何が出来ないのだ?」
「大規模な魔術は使えないとは言ってましたね」
剣を手にしながらラクルも隠し通路へと飛び込む、ガンザも息を整えると飛び込んだ。
―――――
「奴等が来たぞ」
公爵本邸でバグラスがそう呟く、その肩には大人の指くらいの大きさの蜻蛉の様な虫が止まっていた。
「ほう…それにしては街に騒ぎが感じられないですね」
「虫の報告だが奴等この街の隠し通路を使っている、時間を考えるともうすぐここに着くぞ」
「それは出迎える手間が省けるというもの、どれどれ…」
そう言ってフィフスは懐から鏡を取り出してなぞる、すると隠し通路を通るベルク達の姿が映った。
「ほうほう、彼が黒嵐騎士ですか…む?」
そして最後尾にいる者を見て笑みを止めた。
「…はて、どこかで見たような?」
鏡に映るガンザを見ながらフィフスはそう呟いた…。