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99:奪われた幸せ


「我が一族は代々ふたつの神器を守っていた」


「神器…もしかしてレアドロップか?」


「この大陸ではそう呼ばれているらしい、まさにお主達が持っている武具はヒヅチであれば神器と呼ばれるものだ」


頷きながら答えたガンザは抱えた大剣…斬馬刀を手にする、改めて見ると重厚ながらも美しい波紋を伴った刀身に岩を削り組み合わせた様な鍔や柄からは山の様な厳かさを感じる。


「一族が守っていたひとつはこの嶽刀(がくとう)ザンマ、そしてもうひとつが日輪鏡(にちりんきょう)カムツヒ…フィフスによって奪われたものだ」


「…何があったんだ?」


「…一族が代々受け継いできた様に我もまたザンマを息子へと継承させた、息子もカムツヒを継承した巫女を嫁に迎えた事で肩の荷が降りたのと二人への祝いの品でも送ろうと人里に下りていた」


ガンザはかつての事を思い出す様に瞼を閉じながら語る、その姿はどこか哀愁を感じさせた。


「そして帰った時にあったのは…破壊され毒によって穢された里と一族の亡骸であった」


「…っ!」


「誰か生きてる者はいないかと、息子夫婦は無事かと里の中を駆け回り見つけたのは…ザンマによって生み出された岩牢で嫁の亡骸を抱える息子がいた」


「そんな…」


「息子は我であると分かると我がいない間に起きた事を教えてくれた…何者かに襲撃された事、その者達によって里の人々は殺されカムツヒを奪われた事、そしてその一人はフィフスと呼ばれていた事、息子はザンマだけは奪われてはならないと己ごとザンマを岩牢の中へと封じたが奴等は里に毒を蒔いて去ったと…」


ザンマを握る力が強くなっている、話を聞いていた俺ですら怒りを抱く諸行…ガンザの怒りは察するに余りある。


「息子はザンマを我に託して謝りながら息絶えた…弱い息子ですまなかった、孫も抱かせられない親不孝者ですまなかったと…」


「…」


余りの悲痛な過去に誰もが言葉を失う、ガンザには慰めの言葉すら浮かばなかった。


「息子が謝る必要などない…」


ガンザは静かなれど激情を込めた声で呟く。


「命を賭けて戦い、最期の最後まで守ろうとした息子も義娘も謝る必要などあるものか…それを証明する為にも我はフィフスを倒さねばならん。

ザンマの本来の力を知ったのはそう決意した時だった」


決意を込めた瞳と声に呼応する様にザンマの刀身が輝く、死しても揺らぐ事のない決意を示すかの様に…。


「…ガンザ、俺達はこれからフィフス達がいるであろうところに向かう」


「っ!」


「奴等をこのままにすれば俺達の大切なものを更に踏みにじってくるだろう…それを防ぐ為にも力を貸してくれ」


そう言って手を差し出す、少ししてガンザはふっと笑みを浮かべた。


「ラクルに負けず若いながら良い戦士の相をしているな」


そう呟くと皺の刻まれた手で俺の手を握り返してきた。


「お主の強さは僅かなれど身を以て知っている、お主程の強者の力を借りれるのであれば喜んで応じよう」














―――――


ガンザとラクルと合流した後、俺達はひとまずは町で一夜を明かす事にした。


先に見張りをしてもらっていたアリア達と交代して火の番をしていると気配を感じて振り返る、そこにはラクルがいた。


「まだ時間じゃないぞ?」


「ああ、分かってる」


ラクルはそう言うと意を決した様に口を動かした。


「少し、話さないか?」

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