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10:決着


深々と突き刺さった手斧が視界に映る、力を込めて鎧から手斧を引き抜いた瞬間…。


足下が黒い沼の様になり、幾多もの剣が飛び出してきた。


「なっ!?」


風を使って退がるも喉元に迫る剣を手斧で防ぐ、だが剣の威力を殺すには至らずにふき飛ばされて防ぐのに使った手斧の刃には罅が入っていた。


ボスメイルは周囲に出した剣の一振りを手に取る、さっきの剣よりも倍近い幅に身の丈と同じくらいの刃長の大剣を片腕で振るってみせた。


「腹に穴空いたくらいじゃ死なないってか…」


しかも大剣に持ち替えたのはさっきの様に弾かれない様にする為だろう、流石にあれだけの大きさの刃を受けて弾く事は出来ないし、手斧とて刃に罅が入ってるから尚更だ。


ボスメイルは大剣を構えると真っ直ぐにこちらへと迫る、即座に横に避けるがすぐ傍で振るわれた剣圧が体に吹きつけて冷や汗が流れた。


大剣が再び振るわれる、さっきの剣が鋭く疾いのに対してこっちは重くてデカい、避ける事は出来るが放たれる剣圧は防御したら防御ごと叩き斬られると分かってしまう。


(だが…)


腹の空いた穴から黒い泥の様なものが溢れ出る、流石に先程の一撃は無視できないのか魔術を使う気配もなく動きも直線的なものになっている。


とは言ってもこちらは手斧が限界を迎えており魔力も大半を使って疲労も蓄積している、対してあちらはダメージを負ってはいるが攻撃は苛烈さを増し、動きが衰えた様子もない。


「はは…」


それでも脚は動く、指に力は残ってる、思考になんら曇りはない、まだ戦えると訴える全身に笑みが浮かぶ。


手斧をしまって小剣を両手で構える、ボスメイルもそれに応える様に構えると少しして同時に動いた。


空を裂いて迫る大剣を避ける、小剣で腹を狙って斬りつけるが籠手で防がれる、繰り出された脚甲を後ろに跳んで避ける、大剣を振りかぶって迫ってくるのをあえて踏み込んで力が乗る前に受け流して凌ぐ。


「はは!強いな!」


ボスメイルの暴風の如き剣撃をいなし捌いていく度に精神が研ぎ澄まされていく、思考が余分なものを削ぎ落として加速する、迫り来る致命の刃を潜り抜けて持てる武器と技を叩き込む。


(もっと速く!もっと強く!もっと!!)


風を纏いながらボスメイルの右手首を斬りつける、やはり関節部が他に比べて治るのも早いがその分だけ脆い。


ボスメイルが大剣を薙ぎ払った瞬間、地面に這いつくばる様な体勢で体を落として避けた直後に全身のバネを使い跳び上がって斬り上げる、鎧の隙間を狙った一撃は左腕を肘から斬り落とした。


「―――――――ッ!!」


ボスメイルが叫びとも思える様な音を響かせながら放ったタックルでふき飛ばされる、体勢を直しながら着地するとボスメイルは片腕で大剣を再び薙ぎ払ってきた。


「がっ…!」


小剣で下から大剣の腹へと打ちつけて軌道を上に逸らす、衝撃で手から離れた小剣は砕けて破片を散らしながら地面に落ちた。


ボスメイルが大剣を上段で構える、そして小剣を壊されながらも受け流したままの体勢でいる俺にトドメと言わんばかりに振り下ろした…。















(ここだ!!)


大剣が振り下ろされる寸前に左手で引き抜いた手斧を右手首に叩きつける、柄を通して刃が壊れていくのを感じながらも振り抜くと刃が砕けるのと同時にボスメイルの大剣ごと右手首が宙を舞った。


「“風跳(ウィンドステップ)”!」


纏った風を全て使って飛び上がると大剣を掴む、残された魔力を全て身体強化に注ぎ込んで想像以上の重さの大剣を気合いと共に振り下ろした。


「これで、終わりだっ!!!」


大剣が地面を斬り裂く音が響き渡る、振り下ろした体勢の俺の前では縦に真っ二つとなったボスメイルの姿があった。


…ミゴト


頭の中にそんな声が聞こえた様な気がした直後にボスメイルの姿が黒い砂の様に崩れていく、だが崩れたそれは意思を持つかの様にこちらに迫ってきた。


まだ終わってないのかと身構えたがそれは手と大剣に集まっていく、黒煙に包まれたかの様な状況は長くは続かず、黒煙が収まると手にしていた大剣は漆黒の小剣と手斧になっていた。


「カオス…クルセイダー?」


頭の中に響いた声を呟くと同時に全身に何かが流れ込んでくる様な感覚がして意識が遠のく、他にも魔力を空になるまで使ったのと張り詰めていた緊張の糸が切れた事で限界が来たと他人事の様に思い至った。


意識を失う直前、女の声がした気がした…。

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