第六話 良介くんと日記帳
九月は良介くんが谷底から這い上がってきました。
良介くんはニコニコと笑っています。
「現実とは何かわかるか、栞ちゃん」
良介くんはそういいます。
「本当の世界がどこにあるのか、誰にも確かめる方法はない。くだらないゴミクズの中に真実が眠っていることだってあるんだよ、栞ちゃん」
良介くんはまるでわたしを問いつめようとします。わたしが何か悪いことでもしたのでしょうか。
「例えばここに一冊の日記帳がある。きみはこれをただの日記帳だと思っている。そうだね、栞ちゃん」
良介くんの話はつづく。わたしの気持ちを無視して、良介くんはただしゃべりつづける。
「だけど、ここにももう一冊の日記帳がある。こっちの日記帳では、栞ちゃんは次々とひたすら連続殺人を行いつづける殺人鬼だ」
わたしの胸が熱くなる。良介くんは何か大事なことをわたしに教えようとしてくれている。
「おれにはどちらの日記帳が真実なのか容易にはわからない。わかるかい、栞ちゃん」
良介くんはいう。
「きみは日記の最初の一ページ目にあったとおり、勇太と無人島に行き、そこで古代人に日記帳の中に閉じ込められたんだよ。きみの日記帳の中に書いてあることが真実なんだ。おれたちのクラスはみんな英雄になって旅立って行ったんだ。早く現実の世界に帰ってくるんだ、栞ちゃん。みんなが待ってるんだ」
わたしは泣いた。とめどもなく涙があふれた。それとともに、栞ちゃんの姿は消え、日記帳の中に栞ちゃんが現われた。
この日記帳が古代人の魔法? ここは嘘の世界だったの?
それを聞いて、クラスの女子たちはそれぞれ好きな男子のもとへお出かけに行きました。
良介くんの姿もいつの間にか消えていました。
「あらあら、そんなことだと思ったわ」
ひとり、先生だけがこの日記帳の中に残ったのでした。




