第四話 壮太くんと高層ビル
「今年の七月は壮太くんと新築の高層ビルに遊びに行きました。屋上の展望台からの眺めがとってもいいのです。二人で町並みを見下ろしていると、壮太くんが語りだしました。わたしはとてもいい気分でそれを聞いていました。
『おれはとても落ち込んでいるんだ、栞ちゃん。おれたちのクラスの男子は十五人中十二人が、とんでもない英雄になってしまった。そのあまりのすごさにおれは愕然としていた。そう、それでおれは努力したんだ。死ぬほどの努力をね。
そして築きあげた。わずか数ヶ月で壮太財閥グループをだ。始めは、紙コップの販売という地味な商売からだったが、チャンスをつかんだおれは、土地を転がし、ベンチャーに融資し、数千万円を手に入れた。そして、それをもとでに数十億円、さらには数千億円という金をつかんだんだ。
栞ちゃん、この高層ビルはね、おれの所有物なんだよ。分かるかい、おれはこの歳でここの社長なんだ。もう、学校なんてくだらないところに行っている暇はないんだ』
わたしはとてもびっくりしました。まるで夢のようです。そのあとで、壮太くんはわたしに求婚しましたが、わたしはそれを断りました。わたしはお金で動く女ではなかったのです。さよなら、壮太くん。これからは若き社長として自分の財閥を経営していってください」
栞ちゃんが日記を読み終えると、ほとんど女子しか残っていないクラスはどよめいた。
まさか、壮太までそんな大出世をするとは。
それでは学校へ来なくても不思議はあるまい。
クラスの女子たちはいなくなった壮太くんを褒めちぎって収拾がつかなかった。
そして、栞ちゃんはいつもどおり笑顔をふりまいて学校から帰っていった。
だれも気づかなかった。
嘘なのだ。
高層ビルは壮太くんの持ち物ではなかった。
栞ちゃんは、お金ではなく、アリバイが作れるかで動く女なのだ。
都会の高層ビルの開かずの荷物室に、壮太くんの死体が転がっている。
壮太くんの時計も動かない。




