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一人での戦い

馬車の荷台に乱暴に押し込められた拍子に足首を擦りむいた。


一体何が起こっているのだろうう。


恐怖で声が出ない。


口を塞がれた後に手足を縛られ目隠しをされた。


一瞬でしかも背後からだったのでよく分からなかったが、相手は二人組のようだった。


「早く出せ!」


馬車が走り出す。このままどこへ連れて行かれてしまうのだろうか。


しばらくすると二人の男が話し始めた。


「この間は失敗したけど今回は楽勝だったな。」


「しかし何で護衛が一人もいないんだ?本当に令嬢か?」


「ばか、一般市民がこんな良いドレス着ないだろ。それに俺は見たんだ。祭の来賓席にこの女が居るのをな」


ふとニナが言っていた話を思い出した。


魔力を持つ令嬢を狙った誘拐事件があること、誘拐しては魔力を持つ子供を産ませその力を悪用しようとしていること。


一般の市民は私が魔力を持たないという噂は知らない。


ならば私を誘拐して魔力を悪用しようとする者もいるかもしれない。


フルールや普通の令嬢には護衛の意味でもお付きの者がいるが私にはそんな者はいない。


だから狙われたのだ。


こんな人気のないところで連れ去られてしまっては誰にも気付いてもらえないんじゃないか。


私は絶望的な気持ちになった。





すると急に馬車が止まった。


「うっっ」


受け身がとれずに体を荷台に打ち付けられる。


「しまった。誰か来るぞ」


「追手か?」


「わからない。・・・仕方ない、こっちへ行くぞ」


「でもそっちは・・・」


「しょうがねーだろ!」


どうやら誰かが追ってきているらしい。


「おい、降りろ」


声を掛けられたかと思うと、倒れていた体を引っ張り起こされる。


「ここから先は馬車じゃ通れねーからな。仕方ないから歩いて行くぞ」


男のうちの一人に強引に馬車から引きずり降ろされた。


今度は縛られていた足を解かれ、両脇から腕を掴まれる形で走らされるが目隠しをされているので上手く走れない。


「もっと早く走れ!」


「すっすみまへんっ、目隠しで、うまく、走れまへんっ」


布で塞がれている口でなんとか言ってみると、目隠しと口を塞いでいるものを外してくれた。


「お前にどんな魔力があるか知らないが、変なことするんじゃねーぞ」


「・・・はい」


どうにかしようにも私の魔力ではどうにも出来ない。


両脇を二人に引かれて走りながら周りの様子を覗った。


どうやら公道を外れて森の中を走っているようだ。


道が整備されている公道と違って森は木々が生い茂り馬車は通れない。


しかし森には狼や熊、そして結界をすり抜けてきた魔物が潜んでいることもある。


こんな所で出くわしたら全員ただでは済まないだろう。








森の中を走り続けて30分くらい経っただろうか。


疲れ果てた私はもう走れなくなっていた。


運動する習慣なんてないしあまり外出もしていないから体力がなくもう限界だった。


足が回らなくなりもつれてバランスを崩してしまう。


すると私の足が引っ掛かり隣の男もバランスを崩す。もう一人もつられて3人一緒に倒れてしまった。


「いってぇーなぁー!!」


「す、すみません」


体を起こしてみるとみんな泥だらけだった。


「うわっなんだよ!ヒルに噛まれちまった!」


男の一人が叫んだので見ると、両腕をヒルに噛まれていた。


よく見ると私ともう一人の男も足と腕を噛まれている。


庭の手入れには虫は付きものなので虫は全く怖くないけれど、ヒルは血を吸うし吸われた場所はなかなか出血が治まらない。それに跡が痒くなるのよね。


そんなことをぼんやり考えていたらある考えが頭を過る。


もし人じゃなくても能力を強化できたら・・・?


ヒルは人の血液を吸う。出血も止まらなくなる。


その能力を強化できたなら・・・逃げるチャンスができるのでは?


私はダメ元で二人の腕に吸い付いているヒルに対してのみ魔力を使った。


どうか上手くいきますようにと、ヒルに願いをかけながら。


男達はヒルをはがそうと躍起になっている。  


集中して・・・。集中して・・・。


「くっそ、なかなか取れねーじゃねーか。・・・・・・うわっ!!なんだこのヒル!?ぐあー!!!」


男の一人が悲鳴を上げる。


「なんかすげぇ勢いで吸われてるぞ・・・!?ぎゃー!!!!」


続けてもう片方も。


二人の顔色が段々と青白くなっていくのがわかった。


動きも鈍くなり、何やらうめき声をあげている。


しばらくすると二人はぐったりして動かなくなった。


・・・やった?成功したの?


私は慌てて魔力を解く。


魔力によって大量に吸血したであろうヒルはポトリと地面に落ちた。 


二人の腕からは大量の血が流れていた。


「どうしよう・・・私ったらなんてことを!!・・・この人達死んでしまったの?」


慌てて確認すると二人はまだ息をしていた。


このまま逃げる?でも放って置いたらこの二人は死んでしまうだろう。


その時、誰かに呼ばれた気がした。


辺りを見渡すと遠くから灯が見える。


「アルレットさまー!ご無事ですかー!!」


見知らぬ男性が二人こちらへ駆け寄って来てくれた。


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