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リオネルの考え

アルレットとパーティーで久しぶりに会ったときには驚いた。


子供の頃の明るくて人懐っこい印象と違い、人の顔色を伺いびくびくしているように見えた。


彼女や彼女の家に関する噂は度々耳にしていたが疎遠となってしまった今では真偽は解らない。


しかしカンタール家長女には魔力がないという噂だけは真実でないことは解る。


子供の頃二人で遊んでいたときはよく僕の魔力で湖を一面凍らせては滑って遊んでいた。


それほど幼い頃から僕の魔力が強かった訳ではない。


なぜなら彼女が居ないときには僕は湖を凍らせることは出来なかったからだ。


本当はバケツ一杯の水を凍らせる程度の力しか持っていないのだが、彼女と一緒の時はたまたま上手く魔力が発揮できるのだと思っていた。


しかし大人になり自分の本当の力量を把握していくにつれて湖を凍らせたあの力は僕一人の力ではないということに気付いた。


その頃にはヴァネッサ様も亡くなっており彼女も集まりに来なくなっていたので真偽を確かめられなかった。


しかし後継者発表のパーティーで彼女と再会し確信した。


やはり彼女は素晴らしい力を持っている。これを利用しない手はない。


僕はこのままでは後継者には選ばれないだろう。


弟のモーリスの方が僕よりも明らかに魔力が強いことは解っている。


しかし彼女の力があればどうにかなるかもしれない。


父は後継者発表のパーティーを魔物に襲撃させて魔物を討伐した方を後継者にしようと考えているようだ。


彼女に僕の魔力を強化してもらい僕が魔物を討伐すれば、僕は後継者になれるかもしれない。









「君をあの家から自由にする代わりに、今この場で僕の魔力を強化してほしい」


我ながら狡いことを言っていると思う。


しかし彼女はしばらく考えた後、小さく頷いてくれた。


強化してもらうといっても特に何かをする訳ではなく、彼女は僕を見ながら何かを祈るようにしているだけだった。


本当にこれであの湖を凍らせた時のように力が強くなっているのか少々不安に思いながらも彼女の力を信じるしかない。


しばらくすると中庭から何かがぶつかるような大きな音と共にグリフォンが窓を突き破って突入してきた。


事前に来ると解っていても実際の魔物を目の前にすると恐怖ですぐには体が動かなかった。


招待客は皆恐怖に怯え逃げ惑い、会場内はパニック状態となる。


父の魔力で手懐けているとはいえ、後継者を決めるためだけに何も知らない招待客の前に魔物を出すなんて我が父ながらどうかしていると思う。


この場で魔物を攻撃できる力を持つ者は、父を除いてカンタール家当主のロバート様と僕と弟のモーリスの3人だろう。


しかしロバート様はどうやら自分の家族を守る方に意識が向いており、魔物討伐どころではなさそうだ。


弟のモーリスは招待客を避難させている。


事前に父が魔物を寄越すことを知っていた僕と違ってモーリスは何も知らないのだ。


そして僕はアルレットによって力を強化されている。


これだけ有利な状況なのだ、きっと出来る。


僕が魔物の死角へ回り攻撃を仕掛けようとしていると、急に魔物が彼女の方目掛けて飛んでいった。


まずい!彼女がやられてしまったら僕はどうなるんだ!


僕は咄嗟に出来る限りの力を込めて魔物を攻撃した。


するとどうだろう。


急激に凍てついた空気が吹き荒れ一気に部屋一面が凍りつき魔物はカチンコチンの氷の塊となったのだ。


まさに湖を凍らせたあの時のように。


魔物は僕が討伐した。弟ではなく、この僕が。


会場からは拍手が沸き起こった。


父は誇らしげな顔をしている。


そのまま後継者は僕だと発表され皆から祝福された。


全てが思い通りになった。なのに、心の底から喜べない自分がいた。


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