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求婚

続々と招待客がパーティー会場を後にするなか、カンタール家も帰りの馬車に乗り込もうとしていた。


「今日のリオネル様素敵だったわぁー!それに

あんなに強い力を持っていたなんて!」


フルールはリオネル様が魔物を倒してからずっとこの調子だ。


「そうねぇ。あの方だったら家柄も申し分ないしフルールに相応しいわね」


「彼は後継者だから婿には来れんぞ。それにフルールが居なくなったらうちは誰が継ぐんだ」


「あーあー。またお姉様のせいで私ばっかり苦労するー。」


またこの人達とあの家に戻るのかと思うと気が重い。


「そういえばお姉様、パーティーの時にリオネル様と話してたわよね?お知り合いなの?」


ぎくっとした。見られていたとは。


「亡くなったお母様がリオネル様のお母様と友人で、小さい頃によく遊んでもらったの」


「ふーん」


別に嘘をついている訳ではないのにフルールの視線が辛い。


「リオネル様ってあんなに素敵な方なのに女の人のことを避けてるって噂なのよ」


「そう・・・」


だから何だって言うのだ。


「きっとシャイな方なのね。お姉様は女として見られていないから気軽に話せるんでしょうね」


そんなことは私だって解っている。


「ちょっと待ってください!」


その時リオネル様が息を切らしながら私達の馬車まで追いかけてきた。


「これはこれはリオネル様!いやぁ〜、本日の魔物討伐は見事でした!これならアルバトス家も安泰ですな」


「いえいえ、今日はたまたま運が良かったんですよ。それよりお帰りの所申し訳ないのですが、少しだけお時間をいただけませんか?」


「ええ。それは大丈夫ですが・・・どうかなさいましたか?」


父が不思議そうに尋ねる。


「いきなりですが失礼を承知で申し上げます。・・・娘さんに結婚を申し込ませてください!」


「結婚って、いきなりそんな・・・!!」


フルールが頬を染めながら私の方へ視線を送る。


「ええっと・・・大変光栄な申し出ではありますが、うちはまだ娘のどちらが後継者になるか決まっていなくて。ですので後継者の方との縁談はまだ考えられる段階ではないのです。それにフルールもリオネル様とは初対面ですし本人に確認してみないと・・・」


「アルレット嬢です。」


「は?」


「僕はアルレット嬢に結婚の申込みをしたいのです」


「アルレットに?」


父も継母もフルールも、そして私自身もびっくりして何も言えなかった。


「アルレット嬢に、です。返事はまた後日で構いませんのでゆっくり考えてみてください。お帰りの前に引き留めてしまい申し訳ありませんでした。」


リオネル様はにっこり微笑むと私達を丁寧に見送ってくれた。







「絶っっっ対にダメよ!!リオネル様とお姉様が結婚なんて有り得ない!!!!」


フルールは屋敷に帰ってからずっとこの調子だ。


「そうよねぇ。後継者と結婚するってことは後継ぎも産まなきゃいけないし、後継者の補佐の役割もしなきゃいけないのよ。魔力のないアルレットにそれが出来るとは思えないわ。あちらに迷惑をかけることになるし、何よりカンタール家の恥を晒すようなものよ」


継母も同調し父も難色を示していた。


継母の言う通り後継者と結婚するということには様々な責任が発生する。


まず魔力を持つ後継者を産むこと。そして後継者の仕事の補佐をすること。


継母は魔力を持たないが母がまだ生きていた時に愛人の立場でフルールを出産した。


母の死後は周囲から再婚を反対されていたが、フルールの魔力が目覚めると掌返しで歓迎され当主の妻となった。


肝心なのは魔力を持つ子供を産めるかどうかなのだ。


魔力がないと思われている私では当主の妻は務まらないと。


もうこの際全て白状してしまおうかと思っていた矢先、リオネル様とウィルソン様が屋敷へ訪問してきた。


「先日は息子が急な結婚の申込みをして驚かせてしまい申し訳ありませんでした。今日は改めてご挨拶に伺わせていただきました」


ウィルソン様が深々と頭を下げる。


「いやいや、そんな滅相もない!こちらとしても大変光栄なお申し出でしたが、何分うちのアルレットなんぞではリオネル様には不釣り合いかと恐縮しておりまして・・・」


父が失礼に当たらないように言葉を選びながら話しているのが解る。


「不釣り合いだなんてとんでもない。亡きヴァネッサ様の血を引く娘さんだ、きっと素晴らしい力をお持ちに違いない」


ヴァネッサ=カンタール・・・亡くなった私の母は魔力の中でも珍しい癒しの力を持っていた。


怪我を癒し草木を茂らすその力は正に人々に癒しを与え、魔物さえも遠ざけた。


ウィルソン様はきっとそれに類似した力を私も持っていると期待しているのだろう。


母のような力を持たない自分にいつも以上に劣等感を感じてしまう。


「すみません、少しだけアルレット嬢とお話したいのですが・・・よろしいですか?」


リオネル様の申し出で二人で庭を散歩することになった。


「それにしても君の力には驚いたよ〜!グリフォンだけでなく部屋中凍っちゃうんだもん!!もう、カチンコチン!!」


「いえ・・・きっとリオネル様の元々のお力が強いからです」


あのパーティーの際に私はリオネル様の魔力を強化させたのだ。


でもまさかその後にグリフォンが襲ってくるなんて思ってもみなかったけれど。


「いやぁ、僕の元々の力なんて大したことないんだよ。君の力が無ければグリフォンの手足や羽を凍らせて動きを封じ込める程度なもんさ」


それでも自分の力で魔物を討伐出来るというのは、自分では何もできない私からすれば羨ましかった。

 

「ところで私をこの家から自由にしてくださるというお話は、リオネル様と結婚することでこの家から離れるということなのですか?」


「何の捻りもないけどそうなるね」


「私を自由にするためだけに結婚していただくなんて・・・それではリオネル様に申し訳ないです」

 

「うーん・・・まあ、普通に考えればそうだよね」


「私にとっては良いお話ですが、リオネル様にとってはあまりメリットはないでしょう?」


「・・・あるんだ。僕に君のその力を貸してほしいんだ」




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