襲来
「良い話?」
「そう。僕の言うとおりにしてくれれば大丈夫だから。君はあの家から自由になりたいんじゃないかい?」
あの家から自由になる、、、ずっと考えてきたことだった。
けれど家を出たところで行く宛もない私はどうやって生きていけば良いのか解らず実行に移せずにいた。
「大丈夫。家を出た後の君の生活は保証する」
リオネル様は優しく微笑んだ。
招待客もほぼ会場に揃い、今か今かと当主からの後継者発表を待ちわびている時だった。
ズドーン!!
何やら中庭の方から物が崩れるような音がした。
ドンッ!ドンッ!!
音がどんどんこちらに近付いてくる。
招待客が何事かとざわつき始め、使用人が窓から中庭の様子を覗おうとしたその時。
ガシャーン!!
「きゃーッ!!」
いきなり窓を突き破って何かが会場へ飛び込んできた。
鳥の様に大きな翼と鋭いクチバシ、下半身は獣の様に毛で覆われ犬の様な後ろ脚が付いている。
「グリフォンだ!!」
「どうしてこんな所に!?」
結界をすり抜けて領地内へ侵入してきた魔物を見たことがあるが、こんなに間近で見るのは初めてだった。
まさかアルバトス家の結界をすり抜けてくるなんて、、、
グリフォンは壁を破壊しながら会場内を飛び回っていく。
ここに居る者たちは魔力を持つ者が大半だが、魔力にも種類があり攻撃力のある力を持つ者は限られていた。
主に当主となる者は攻撃力のある力を持っているが、今日ここに居る各家の当主は私の父とアルバトス家当主ウィルソン様。3つ目の家系の当主は今日は不参加だ。
会場を見渡すがウィルソン様の姿がない。
お父様はフルールと継母を探し回っている。
その時グリフォンが私の方目掛けて飛んできた。
「お父様助けて!!」
咄嗟に叫んでしまった。
ビュオオオオーッ!!!!
その時ものすごい勢いで凍てついた空気が流れ込んできた。
息をするにも辛い寒さにガタガタ震え出す。
グリフォンはどこ?
息をはーっと吐き出し、何とか呼吸を整える。
周りを見渡すと椅子やテーブルなどあたり一面が凍りついていた。
その中にカチンコチンに凍らされたグリフォンが居た。
その隣にはリオネル様。
招待客はみな寒さに震えていたが無事だった。
「みなさん、ご無事でしたか?」
ウィルソン様が招待客に声をかけた。
「どうやらグリフォンが結界をすり抜けて来てしまったようで、怖い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。でももう大丈夫です。グリフォンは長男のリオネルが倒しましたのでご安心ください!」
大きな声が会場全体に響き渡る。
「このままパーティーを続けるのは難しいので、この場で後継者を発表させていただき今日はお開きにしたいと思います」
会場が静まり返る。
「後継者は長男のリオネルです!」
会場内が拍手で包まれた。