赤いコスチュームのパワー
「銃を置いてここから黙って立ち去れ。今日の事は目を瞑ってやるから」
良太は腕を組み神妙な顔、(と言っても赤いマスクをかぶり目と口だけが見えるだけで表情はわからないが)で高橋に告げた。
「黙れ!黙れ!黙れ!目を瞑るのはお前の方だ。永遠に瞑ってろ!」
高橋は黒い銃身を良太の胸に狙いをつけ、引き金を引いた。
マグナムのサイレンサーはプッシュという音を出し、九ミリ弾を放った。その弾丸は良太の胸に当たった、が、良太にとってその衝撃は蚊が当たった程の感覚もなかった。
親切心の強い良太は思った。
せっかく銃を発射したのに、何の反応を見せないのは申し訳ないと、そして撃たれたというようなジェスチャーを取った。
良太は左胸を押さえながら少し屈んで見せた。
「どうだ、クルクルマン。弾を食らった感触は」
しばらく屈んでいた良太は、顔を上げ「別に」と、言いながら腰を伸ばし、ついでに屈伸運動した。
高橋は呆然と良太を見て、眼を何度も何度も手で擦った。
「少し腕が鈍ったようだ。しかしこんな至近距離で外すとはどういうことだ」
高橋は慎重に、両手で銃を握り直し中腰で良太の胸に狙いを定めた。
「今度こそ、しっかりとあの世に送ってやるぜ、クルクルパーマン」
「違う、ミラクルマンじゃ」
プス、プス、プス。
高橋は三発続けざまに弾を放った。
良太は今度も撃たれた真似をし片膝をつき、胸を押さえた。
高橋はそれを見てイラついた。
「三発撃ったんだ。サッサと倒れろ!」
「いいや、まだまだ」
良太は立ち上がり、そのまま余裕のラジオ体操第一を始めた。
「お前何やってんだ!弾が当たったんだぞ!血が出てるんだぞ!って、真っ赤な衣装でよく分からねえが、とにかくお前は死んでもいい状態なんだ。なんで、そこでラジオ体操やってるんだ」
「最近ちょっと体がなまって」
「ふざけるな」
高橋は残りの弾を全て良太に撃ち尽くした。
が、良太は平然としてラジオ体操、最後の深呼吸を終えた。
「もう十分満足したかい。そんなオモチャは二度と持たない事だ」
良太はそう言いながら高橋の右手を握りしめた。
「ミラクルマンよ、力は入れるな」
又衛門は良太に告げた。が、時すでに遅く
「ギャーアアア」高橋の銃を持っていた右手首が、良太の手で潰れてしまった。
「僕はそんなに力入れていないよ」
「その服を着ていればお前のパワーは万人力なんじゃ」
「てめえ、よくも俺の利き腕を握りつぶしたな」
高橋は激痛を耐え、左手を腰に回し、ベルトに挟んで隠し持った匕首を握った。
思いっ切り抜いたその短刀を良太の目の前でチラつかせた。
高橋は痛みを見せず我慢強くやせ我慢を見せ、歪みまくった笑顔を見せた。
しかし、額からは冷や汗が滲み出ていた。
刃渡り三十センチの短刀は青白く光り輝いてる。
「俺のこの手であの世に送ってやる。赤い化け物め」
大きく振りかざした短刀を思いっ切り良太の胸に振り下ろした。
青白く光る切っ先は良太の胸でペキンと折れ、その折れた刃先が宙に舞いあがり そして運悪く鋭い刃先が高橋の後頭部に直に当たった。
「イテエエエエエ」
「痛いいいこの野郎!なんてことしやがるんだ!」
「僕は何もしてないよ。やったのはあなただよ」良太は高橋に言った。
高橋は先の折れた短刀を思いっ切り何度も何度も良太の胸に突き刺そうとしたがその胸はまるで鋼のようで、、貫くことはできなかった
良太は仕方なく、高橋をおとなしくさせようと拳骨で殴ろうとした。
「まて、デコピンじゃ」
「えっ?」
「拳骨はだめだ。デコピンで十分じゃ。それも優しく弾くんだ」
良太は又衛門の言うとおり、人差し指で高橋のおでこにデコピンを食らわした。
「ぐわあ」
高橋は二メートルも後ろに飛ばされ、壁にイヤと言うほど叩きつけられた。
「やっちゃったな、やさしくデコピンしろって言ったじゃろ。見ろ、高橋め、気を失ったようじゃ」
良太は、痙攣しながら失神している高橋をジッと見つめ、改めて自分の力を実感し、そしてその力に恐怖を覚えた。




